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作成:森岡正博 
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資料

 

<資料紹介>

「アメリカによる報復反対」を叫ぶ市民運動団体・関係者の皆さまへ                      

2001.10.8

 

拝啓

「報復戦争」に当たる政策は存在していません。今米英政府が進めようとしているのは、「報復」でも「戦争」でもありません。 これはあくまで、国際的なテロ組織を殲滅させるためのやむなき行動であり、今回被害を被った世界90カ国に及ぶ市民の総意としての、正当防衛行為です。

しかし日本の知識人や著名人を含め、多くの人々は「報復は新たな報復を呼ぶだけだ。これ以上市民を犠牲にしてはならない」と、まったく同一のワンパターン的な主張をしています。そして「私たちは戦争はいやだ。平和を祈りたい」と、最後は必ず祈りや黙祷に結びつけられます。

彼らのテロ行為に対する態度は、まるで震災や火山爆発などの自然災害であるかのような扱いです。これでは、今後新たに起きるテロ犯罪に市民が対処できるはずがありません。これでは何の対策も生まれてきません。あたりまえのことながら、今回のテロは人災、しかもこれまでにない新たな地球的規模の犯罪です。

アメリカの市民も、新たなテロ攻撃に動揺と不安が隠せない日々を送っているというのが現状であると、現地の友人たちからの報告が私たちの耳元に送られてきました。「アメリカ市民の大半が熱狂的に報復を支持している」という報道はウソであり、マスコミだけが勝手に大騒ぎしているとのことです。思えば今回の「報復戦争」という言葉も、マスコミによる造語であり、マスコミのアジテーションが一人歩きしている感があります。多くの人々が、ただこの一語に騙されているように思えます。

メディアの商業主義に則った飾り文句に過剰反応することなく、先入観 に曇らされた色眼鏡で物事を見る前に、私たちはまず自分自身の立場 を白紙にして、「公平な観察者」(アダム=スミス)の視点から、冷静に情報の氾濫に対処すべきです。

私たちは貴団体*に対し、以下の声明を送ります。

●「平和がいいんだ」「戦争反対」と叫びつづけていたら、平和が来るかのような幻想を振りまく行動や呼びかけはやめましょう。具体的な代案がない呼びかけや祈りだけでは、あまりにもユートピア的で無力です。

●狂牛病対策と同様、「自分に火の粉が降りかからない限りは自分たちは安全だ、何も対策しなくてもよい」と安易に判断することはやめましょう。すでに危険は私たちの足元にあります。取り返しのつかない事態を未然に防ぐ生産的な議論を要求します。

●アメリカが今回の犠牲者であるのに、アメリカの政策を徒らに非難したり、根拠のない陰謀説に注目したり、米メディア批判を強調するのはやめましょう。またアメリカの被害者や犠牲者の遺族への支援を無視して、アフガンやイラク、パレスチナ難民への支援ばかりを叫ぶ「話 のすりかえ」はやめましょう。

●アメリカの慎重な外交交渉や国連安保理への働きかけ、タリバン政府の恐怖政治、ビンラディングループの無差別テロ活動、こうした事実への是非判断を回避して、アメリカの行動を一方的に「報復のための戦争」と決め付けて非難するのはやめましょう。

●今回のテロ事件で、まず日本政府が行うべきなのは、テロに対して 市民の日常生活の安全を守るための危機管理体制の強化です。日本政府や国会各党が模索している「反テロ新法」の成立に市民の立場から協力し、徒らに自衛隊や警察の権限強化を批判するのはやめましょう。むしろ世界の防衛や警察組織と一体となった、テロ撲滅への政策提言や外交への働きかけを要求しましょう。

** 以 上 **

「反テロ・ネチズンネットワーク」有志市民一同


 

註:貴団体とは、グローバル・ピース・キャンペーンのこと