大阪府立大学人間社会学部人間科学科森岡研究室学生レポート (2007年度)

 

『おしゃれ』とは何か

:ストリートスナップからみる『おしゃれ』の判断基準

村尾真由


 

 

はじめに

 

 私自身はずっと「おしゃれ」になりたい願望がある。それは自分という個性をもっとアピールしたい、同性に好印象を与えたいという願望が背景にあるからだ。「おしゃれ」になるためにはまず何をするべきなのか。私の考えたことはまず「ファッション雑誌を読む」ことだった。中学2年生のときに「着まわし術」や「今年絶対買いの流行服」などの見出しが書かれたファッション雑誌を買い、ボロボロになるまで読んだ。当時の私にとってはそれが「おしゃれ」の手本であり、そこに書いてあることを実行することが「おしゃれ」への近道であると信じていたのだ。

 20歳になった今でもその「おしゃれ」になるための努力をやめることはない。「おしゃれ」になるためにはまず流行を知ることが大切で、それは雑誌を読んで学ぶ。金銭的に豊かになった今、高校生の頃に比べて雑誌を買う回数が極端に増えた。そして流行を知り、いくつかを自分の服装に取り入れて「おしゃれ」を目指す・・・。その中で一番参考にしたものが「おしゃれ」さんと呼ばれる一般人の私服コーディネート、いわば読者モデルのストリートスナップだ。彼女らは様々な洋服を、自分らしさを演出しながら着こなし、誌面に華を与えている。彼女らは私と同じような年代で、学生も多いのでプロモデルよりも親近感が湧く。彼女らの着こなしを参考にすることも多かった。

 しかし最近になって気付いたことがある。今私は「おしゃれ」になるための雑誌を買い、読んでいるが、はたして私は「おしゃれ」に近づいているのだろうか。そもそも「おしゃれ」とは一体何なのだろうか。それについて深く考えるようになった。そこで私は読者モデルに目を向けた。彼女らは「おしゃれ」さんとして誌面に掲載されている。彼女らについて考えれば、「おしゃれ」が何なのかが見えてくるかもしれない。そして私は彼女らのファッションスタイルを通して、人々がどのように「おしゃれ」というものを捉えているのか、また「おしゃれ」に関して共通の認識があるのかどうかを調べていこうと考えているのである。もし認識がないのなら「ない」で構わない。それはなぜ人々の中で共通の認識がされにくいのかということを知りたいのである。アンケートで「おしゃれ」な女性とはどういう女性なのか、雑誌に掲載されている読者モデルと同年代の人々がどう思っているのかを調べ、具体的に雑誌からストリートスナップを取り出し、それについて人々がどのように感じるのか、「おしゃれ」というのはどのような思考過程を経て判断されるのかを考察していく。

 

第1章  人々の持つ「おしゃれ」というイメージ

 

 今回のアンケートで「『おしゃれ』な女性とはどのような女性ですか」という質問を投げかけた。それぞれの人から多種多様な回答が得られたのだが、それらを大きくグループ分けしてみると、2つのグループに分けることができた。1つ目は「流行を取り入れているか」「デザインが凝っている服を着ている」「こだわりの服を着ている」「服装のバランスが良い」などの服装のみに対する考えのグループ、もう1つは「自分に似合った服を着ている」「自分の体型をよく理解している」などの自己の外見や内面と服装との関連グループ、この2つが「おしゃれ」であるための必要な項目であると人々は考えているようである。

 「おしゃれ」とは目立つことである。「あの人はおしゃれだな」と考えた時点でその人を周りの人々と差別化しているからである。したがって「おしゃれだな」と判断するにはまずは周りよりも判断する人がその人に注意を向けなければならない。しかし単に目立つだけでは「おしゃれ」と判断するかは疑わしい。ただ単に上下が真っ赤なジャージを着ている人がいたとして、その人が難波などの街を歩いたとすれば、奇抜な色と服装で非常に目立つだろう。しかしその人を見て「おしゃれ」と判断する人はどれほどいるだろうか。ただ単に目立つだけでは決して「おしゃれ」とはいえないのである。したがって、「おしゃれ」と判断する基準を、判断される人が満たしていなければならない。このように、「おしゃれ」の判断基準について考察するとき、どのように人々は注意を向けるのかという点と、そこからどのように「おしゃれ」と判断するのかという点について考察する必要がある。

 

1-1.流行と自己主張

 服装のみに対するイメージについて考えていく。まず流行というものを考えなければならない。流行はもちろんその時期の服の色やデザインや服装の傾向のことであるが、「『おしゃれ』になる上で流行を取り入れることは必要か」と質問すれば、かなりの人が「必要だ」と答えるだろう。しかし「ファッション雑誌から出てきたような人だね」という批判の言葉があるように、流行ばかり追っていて、「自分らしさ」に欠けている服装は「おしゃれ」とはいえないという一般的なイメージがある。

 まずなぜ流行が必要なのだろうか。それは服装に関心があり、服装に気を配っていると単純にアピールできる簡単な方法だからだと考えられる。また流行のファッションをしていることで「あ、あれは流行のファッションだな」と周りが少し注目しやすくなるので、その目のつきやすさが「おしゃれ」につながってくるのではないか。また、流行のファッションを取り入れている人々は街に多くあふれている。そして多くの人々がそれを見ている。したがって流行のファッションに関して「見慣れている」という感覚が生まれる。見慣れているということは「目立つ」という点からは相反するように感じられるが、見慣れていることでその服装を自分が受け入れやすくなるのでマイナス評価はしにくくなる。その点では「おしゃれ」と判断する基準を満たしやすくする要素は含まれているのではないだろうか。ただしここで注意しておかなければならないのは、先ほども少し述べたが、流行を単に取り入れているだけではいけないということである。「見慣れる」ということはその流行の服装をしている「その他大勢」の中に埋もれてしまう可能性も含まれている。私には「自分だけ周りと違うのは嫌だから流行を取り入れている」と話す知人もいる。彼女だけではなく、他にもそのような理由で流行を取り入れている人はいるのではないだろうか。特に日本人は周りとの調和を好む文化を持っている。周りと似たような服装を着ることである集団に属することができ、安心感を得ることができるのである。しかし目立つことが必要な「おしゃれ」になるには、集団に属しているだけではいけない。流行を取り入れつつも、新しい要素を取り入れて周りと差別化を図らなければならないのである。

 そこで必要なのは個性を主張できるような工夫である。それはもちろん流行を追ったものではいけないし、目立つものでなければならない。アンケートの回答からは個性を主張するのに「デザインに凝った服」や「アクセントをつけている」という表現がされていた。「デザインに凝った」「アクセント」とはどういうことであろうか。よく雑誌にあるのは「○○なトップスを主役にして…」「派手な色のパンプスをアクセントに…」という表現である。この「主役」「アクセント」という言葉は、目立つことに結びついてくる。「おしゃれ」は目立つことであるという点から考えれば、服装の中で何かを目立たせるということが、「おしゃれ」に近づくポイントになるのではないだろうか。判断する人に「あれはデザインに凝った服だな」と感じさせるためにも、例えばトップスに派手な柄を着るのであれば、ボトムなどは無地で、奇抜な色は使用しない、など、それを「凝っている」と思わせる工夫が必要ということである。もちろんそれは流行のものではなく、あくまで自分が気に入っているものや、自分が目立つだろう、目立たせたいと思うものを身につけるということである。ただし、目立たせたあとに「おしゃれ」と判断するには、判断する人の主観にかなり左右されるだろうと考えられる。例えば色に関しても、自分の好きな色なら受け入れやすいが嫌いな色ならやはりその人自身に対しても嫌悪感を抱くかもしれない。「おしゃれ」と判断するには、やはり判断する人がその服装を受け入れられるかどうかが大きく影響してくるということである。

 また、アンケートでは、「おしゃれ」とは「全体のバランスがよい」という回答が多く得られた。これについては第2章で具体的に述べていく。

 

1-2.スタイルと内面性

 

 では2つめの自己の外見や内面と服装の関連性が重要であるという点から考察していく。外見を大きく分け、スタイル、顔立ちという点から述べていく。まずスタイルであるが、「スタイルがよければおしゃれに見える」と思っている人は多いと考えられる。それはおそらく服が作られるときの模範体型に近ければ近いほど服のシルエットやデザインをありのままにきれいに見せることができるという理由が挙げられるだろうが、人々が思っている「スタイルのよい人」とはどういう人であろうか。まず頭の中に浮かぶのは「細い」ということであろう。しかし細いといっても程度の問題があるだろう。「骨と皮しかない」と表現されるような極端に痩せている人には不健康なイメージが持たれ、服装に注目する前にその人に対してマイナスイメージを持ってしまい、「おしゃれ」と判断しにくくなるだろう。やはり単に細いだけではなく、健康的な細さ、また顔が小さい、脚が長いなどの全体的なバランスがよい人ということになるだろう。バランスがよいというのは体型のどこかが悪目立ちしている体型ではないということである。マイナスイメージを持たせないという点からも、「おしゃれ」の判断基準を満たす可能性を高くする要素として挙げられるだろう。また顔に関しては、目鼻立ちのよさが重要になってくるのではないか。目立つという点から考えても、目鼻立ちが整った華やかな顔立ちであれば周りより目立つので、その人に注意を向けるきっかけになる。また内面性に関しては、人はどのようにして顔の各部位の形によってその人の性格などを判断するのかということを考えなければならない。ここで「暗黙裡の性格観」やパーソナリティ認知の過程など心理学的な視点が必要になってくるのだが、それについて述べていくと「おしゃれ」という論点からずれてしまうので、ここでは、人は顔や体型だけでも性格を推測することができるという事実だけを述べておく。そしてその推測した内面性と、服装について感じたイメージを合わせて、それが合っていれば「おしゃれ」と判断できると人々は考えているようである。簡単に述べているが、この服装のイメージというのもどのように形成されるのかということを考えれば難しい。それはおそらく顔立ちで性格を判断するように、服装の様々な部分、服の色、柄、ジーンズかスカートか、靴の形など、あらゆる部分を見て、それらが持つイメージから、服装全体に対する印象を形成するのである。これも具体的にどのような服装のときにどのようなイメージを人々は抱くのかということは次の機会に考察していきたい。

 このように、人々が持つ「おしゃれ」な女性はどのような女性かというイメージから、どのように「おしゃれ」という感覚が生まれるのかということについて考察した。次章では、具体的に様々な服装をした人を見たときにどのような感覚で人々は「おしゃれ」を判断しているかについて述べていきたい。

 

 

第2章 アンケート結果による考察

 

今回、私は書店に並んでいる様々なストリートファッション雑誌を購入し、読者モデルのストリートスナップのいくつかを切り抜き、その人が「おしゃれ」なのか「おしゃれではない」のかを答えてもらうという極端なアンケートをとった。私はそのようなアンケートを実施したけれども、アンケートで使った写真の人物を誹謗・中傷しようなどという考えは一切ない。人々がどのように「おしゃれ」を判断する傾向にあるのかを分析するためだけに、サンプルとして使用させていただいたということを述べておく。

 そしてアンケート結果から、その雑誌に載っている「おしゃれ」さんと呼ばれる人々のファッションをもとに、「おしゃれ」という判断はどのように行われているのかについて調べていく。

 

 

2-1.アンケート結果

 

大学生を中心に、ストリートスナップに掲載されている読者モデルと同年代の男女、合計47名にアンケートを実施した。その結果が下の表1である。(使用した写真は最下部に掲載した)。

 

表1 写真を見て「おしゃれ」だと判断した人数 (男性15名 女性32名)

 

 男女差に関しては次章で述べるつもりなので、ここでは合計人数から考察していく。

 

2-2.トップ層について

 

 合計の列を見ると、1位は4番、2位は2番と9番である。

まず1位の4番であるが、彼女は重めのボブヘアで目は二重、髪は茶髪である。ベージュ色で首元はスクエア型に開いているブラウスで、袖は7分丈、ふわりとしたシフォンのような素材のトップスで、前には同色のボタンがついているがすべて閉じた状態で着ている。ボトムはサックス色のデニム素材のショートパンツで、形は太ももに張り付くようなタイトなものではなくキュロットのようになっており、同じ生地のサスペンダーがついている、左側だけ肩にかけて、右側は垂らしている状態である。乗馬ブーツは茶色で目立ったデザインはない。淡いベージュのハイソックスがブーツから顔をのぞかせている。バッグはブーツより濃い茶色のショルダーバッグである。2位の2番は、ボブヘアであるが4番のように下に重心のあるスタイルではなく、先は軽めで、茶髪である。パフスリーブ状になった白ブラウスで、前には黒ボタンがあるが、すべて閉じている。黒色の少しふんわりとした膝上15cmくらいのスカートをはいていて、黒色の8分丈で、レースなどがついていないシンプルなレギンスを合わせている。靴はストラップのついた黒色のエナメルパンプスである。同じく2位の9番は、前髪は眉の上でまっすぐに揃っている。髪は頭の真上でおだんご状にして、黄色い花の形のアクセサリーをつけている。グレーのトレンチコートをはおり、その中には黒と白が基調で、柄は木や人や湖などが細かく描かれているワンピースを着ている。丈はトレンチコート、ワンピースともに膝丈である。細身のデニムパンツはロールアップして、7分丈にしている。靴はグレーだが、足と靴の境界線のラインはオレンジ色になっている。彼女らの服装は、赤や青などの原色をほとんど取り入れておらず、取り入れていたとしてもワンポイント程度で目立つものではない。また彼女らを「おしゃれ」と判断した回答者の意見として、2番は「白色から清潔感が感じられる」、4番は「全体の色合いがきれい」「雰囲気がやわらかい」、9番は「派手なワンピースをトレンチコートでおさえている」などが挙げられた。

 

2-3.第1章の仮説検証

 

彼女らの服装を、先ほど第1章で述べた「おしゃれ」な女性と判断する基準と当てはめてみる。まず流行を取り入れているかという点では、2番はレギンス、4番はサスペンダー付ショートパンツと重めのボブヘア、9番はトレンチコートとおだんごヘアという、それぞれ流行を取り入れている。あくまで私の感覚であるが、それぞれ全てが流行の服ではなく、1〜2程度の流行を取り入れているように感じる。また自分の個性を出すポイントとしては、2番は少しフォーマルささえ感じられる清潔感のある白シャツ、4番は春ブーツ、9番はワンピースが挙げられるのではないだろうか。

また、「服装がその人の雰囲気と合っている」という内面との関連性を考えていく。2番の職業は大学生である。レギンスによってカジュアルな印象を与え、スカートから女性らしさ、白シャツから清潔感も感じられ、彼女のはっきりとした目鼻立ちから感じられるかわいらしさ、上品さが服装と合っていると考えられる。また4番の職業は専門学校生である。ショートパンツから元気で健康的な印象を受け、はっきりとした目元とチークから、少し幼ささえ感じられる。その表情の幼さとショートパンツという幼い印象を与える服装とは共通点が見られる。9番の職業は社会人である。揃った前髪、黒髪とアイラインを引いた少し切れ長の目元から知的さを感じさせる。またトレンチコートを着ることによってフォーマルな印象を持たせ、さらに知的なイメージを形成している。彼女も顔立ちから感じとれる印象と、服装から感じとれる印象はある程度一致していると考えられる。これらの分析から、第1章で述べた内面性との関連も、確かに正しいように感じる。やはり、私たちは無意識のうちにその人の目鼻などの顔立ち、表情、体型などを分析して、その人の内面を分析し、それを服装のイメージを重ね合わせているのではないか。

 

2-4.全体のバランスとは

トップ層の4番を「おしゃれ」と判断した理由として、「全体のバランスがいい」が挙げられた。第1章ではあまり触れていなかったが、「(全体の)バランス」ということについて、アンケートに使用した具体的な服装を観察しながら考察していく。まず、一番重要なのはトップスとボトム、上下のバランスだろう。どのような服装がバランスがよく、バランスが悪いのか。

上下の丈のバランスについて考えるとき、スタイルがよく見えるということと結びつけて考えなければならない。スタイルがよいというのが細身で脚が長く美しいことだとすると、服装や上下の丈によって本来のスタイルよりも良い方向に見せていかなければならない。そこで上下の丈がなぜ重要なのか。それは腰の位置を意識させるからである。腰がどの位置にあるかによって先ほどのスタイルのよさが変わってくる。今回のアンケートで、「おしゃれ」と判断する回答が少なかった26番と27番について考える。26番は淡いブルーの膝上の丈のワンピースを着ていて、その上にグレーのパーカーを着ている。パーカーの丈は腰の位置より少し長い程度である。足元はグレーのタイツ、靴は白色のバレーシューズのようなフラットなものである。27番はタートルネックで黒色の膝丈のワンピースを着て、上着は腰の位置より少し高い丈のサックス色のGジャンである。足元は柿色のタイツで、足元はハイカットのスニーカーである。2人ともワンピースに上着をはおり、タイツでフラットシューズという点が似ている。なぜこの2人を「おしゃれ」と判断する人が少なかったのだろうか。腰の位置という点から考えると、26番は腰より下の位置にパーカーの丈があるので、そこが腰の位置と考えられる。すると実際より腰が低く見える。また彼女らはフラットシューズを履いているので、背を高く見せたり脚を長く見せる効果が、ヒールを履く場合と比べて減少してしまっていると考えられる。そして結果的に脚が短いという感覚を持ってしまい、「おしゃれ」と判断しにくかったのではないだろうか。27番では、Gジャンの丈は腰より高い位置にあるのだが、そこからワンピースが裾に向かって広がっている。腰の上にあるウエストは、腰まわりより小さいことが「スタイルがよい」条件になる。ウエストを意識して27番を見ると、ウエストの細さというものが強調されていない。したがって「スタイルがよい」とは見えず、「おしゃれ」と判断しにくくなってしまったのではないだろうか。腰まわり、ウエストという点から見てみると、「おしゃれ」と判断された回答が多かった人の中で、腰まわりが体型とフィットするようなタイトな服装を着ていたり、タイトではなくてもウエスト周りにベルトをしてウエストを強調させている人は多い。やはりベルトなどをつけることによって腰まわりに注目させ、見た人は無意識に脚の長さやウエストの細さを想像し、その位置によって「スタイルがよい」という判断をしているのではないだろうか。もちろんウエスト周りを強調していなくても「おしゃれ」と判断することはある。例えば25番について考察していくと、彼女は丈の長い黒のジップアップパーカーをワンピースのように1枚で着ている。そして黒のオーバーニーソックスに、黒のヒールのあるエナメルパンプスを履いている。ワンピースはジップの閉じ方でデザインが変化するような、デザイン性の高いものであるが、ウエストの細さや腰まわりの強調はしていない。しかし25番は「おしゃれ」と判断する人が多かった。それはなぜなのかと考えてみると、彼女は脚をかなり露出しているので、ウエスト周りを強調しなくても腰がどのあたりにあるのかというのを想像できるからではないだろうか。その上彼女はかなり細身で、他の番号の人と比べても脚も長く感じられる。その露出の程度や彼女の写真から感じられる「スタイルのよさ」が「おしゃれ」という判断につながったのではないか。このように、露出はその人のスタイルのよさを判断する一種の道具として利用されることもある。また上下の丈のバランスというのも、腰の位置やウエストの位置などを判断する道具になるので、スタイルのよさを判断するために利用しているのである。

書店に売られている雑誌に、よく「着やせ」をキーワードにした特集ページが掲載されている。内容を見ていると、やはり私が先ほど述べたような、スタイルのよさを強調するテクニックなどが書かれていた。例えば服装に縦のラインを強調するような直線づくりをすることであったり、黒色を入れてひきしめ効果を狙ったりと、やはり「着やせ」をしてスタイルをよく見せることによって、「おしゃれ」に近づこうという意図の内容であった。やはりスタイルは「おしゃれ」の判断には必要な要素なのである。

これまでの考察で、「おしゃれ」と判断されるには、やはりスタイルのよさが重要になっているのが分かる。ただ単に服装だけに気を配るだけではなく、脚を細く長く見せるような努力をしたり、ウエストを細く見せるためのポイント作りをしたりと、スタイルをよく見せるということに気を配らなければならないのである。

 

第3章 アンケート回答から見る男女差

 

 今回のアンケートで、女性だけでなく男性からも回答を得た。女性に比べて男性は母数が非常に少ない状態だが、ここから「おしゃれ」な女性を判断するときに男性の視点と女性の視点では違いがあるのかどうかを考察していく。

 

3-1.男性の判断について

 

 まず、先ほど第2章で紹介した表1から、男女で人気のあった上位層を比べる。上位2つの2番と4番は男性の中でも、女性と同じ順位になっている。少し違いが出てくるのは3位以下である。3位以下には男性のほうでは8番と23番が3位に入っている。また、これに加えて、男性の「おしゃれ」と判断する回答率が高く、女性の回答率が低かったのは8番と20番である。

8番はショートヘアで前髪は眉にかからない程度の長さである。明るめのオレンジのメッシュが入っている。耳にはピアスが開けられている。服装は白っぽいベージュのショートトレンチコートを着ており、下2つのボタンを閉めて着ている。ウエスト部分に同色、同生地のベルトのようなものがついてあるが、それは締めていない。ボトムは膝上のショートパンツで、腰周りが少しふんわりとしていて裾は腰周りよりも狭いという、いわゆるかぼちゃ型である。色は薄くて淡いピンク色である。足元は黒の無地のオーバーニーソックス、靴は黒の光沢のある生地のスニーカーである。バッグはショルダーだが、バッグの形そのものは分からない。彼女の服装で印象的なのはショッキングピンクで黒い星マークがついている大きなヘッドホンをかけていることである。23番は茶髪で前髪が長めでセンターパートである。服装は肋骨より少し下くらいの長さの丈が短いミリタリージャケットで、袖を8分丈くらいまで折っている。中にはジャケットより少し長めのグレーのパーカーを着ていて、フードはジャケットの外に出している。パーカーの下にも黒のカットソーを着ており、閉じたパーカーの下から裾が見える長さである。ボトムは青色がベースのティアードスカートだが、花柄やレースなど、違った生地がボーダー状につぎはぎされているようなデザインになっている。その下に10分丈のレギンスをはいており、素足で黒のヒールのあるエナメルパンプスをはいている。バッグは黒のショルダーだが、紐の部分が長く、太ももあたりまでバッグが下がっている状態である。20番は髪は黒く、肩につくくらいのミディアムヘアである。白色の冬物のPコートを着ていて、中には黒のパーカーを着ているようで、Pコートの外にフードを出している。コートはボタンを閉じている。ボトムは黒の裾がせまい、いわゆるカボチャ型の膝丈のスカートである。足元はタイツ、靴はヒールのないエナメルパンプスで、どちらも黒である。バッグは細い紐の小さな茶色のショルダーバッグである。

 これらの女性が、同性より異性に受け入れられやすいのはなぜだろうか。1人ずつ考察していくと、まず8番は服装だけを見ればロックでボーイッシュな印象を受けるが、ボトムはうすいピンク色で、笑顔からかわいらしい印象を受ける。この男性らしさと女性らしさの両立が、より男性に親近感を持たせるかもしれない。また20番に関しては服装もウエストマークなどのタイトな部分を作っておらず、服も体のサイズにフィットしていないところから全体的に体が大きく丸みを帯びているようにも感じられる。その丸みという点と、黒髪で化粧もあまりしていないという点から、幼い印象を受ける。23番に関しては肌の露出が少ない。青色のスカートからさわやかさと、花柄から女性らしさが感じられる。そして重ね着が多く、ジャケットはボトムの女性らしさとは反してミリタリー風である。女性らしさだけではなく男性らしさも取り入れられている。

この3人について分析して感じ取れたのは、女性らしさと男性らしさの両立、そして幼さである。8番と23番は女性らしい服装の中に、少し男性的要素を取り入れているように感じる。8番と20番の服装は自分の体型にフィットしたものではないように感じられ、服のサイズまで自身が到達できていないという未熟さが、幼い印象を与えている。そしてその「幼さ」は、女性よりも男性のほうが受け入れやすいのではないだろうか。このアンケートを実施していて男性から「○番の人はおばちゃんのような服装をしている」や「この服装は老けているなあ」という年齢についての感想が多く聞かれた。これは女性からはあまり聞かれることはなく、もしかしたら男性は女性の顔から読み取れる推定年齢に注目し、服装から感じられる年齢を結びつけて考えているのかもしれない。

 最後に、男性にアンケートを実施していて気付いたことがある。それは男性が、このアンケートに女性以上に興味を示していたことである。「楽しいですか?」と何人かの男性に尋ねたところ、「男はこういうのが好きだからね」と答えた。「こういうの」とはおそらく女性の写真がいくつか並べられている中から、自分にとってプラス評価の女性を選び出すという作業だと考えられる。これはおそらく男性が好みの女性を選び出す作業と似ているからだろう。ここで1つの仮説を立てると、男性は、「おしゃれ」な女性を選ぶときに、無意識のうちに「自分の横に恋人として、その服装で立ってもよい女性」という基準で選んでいるのではないだろうか。これについては今回のアンケートのデータだけでは検証されないので、次の機会にまた報告したい。

 

3-2.女性の判断について

 

 女性の「おしゃれ」と判断する回答率が高く、男性が低かったものは、7,9,14,16,18,24,27,30である。まず3-1で述べた番号は3つであったのに対し、こちらは8つである。さらに全体的に「おしゃれ」と判断する回答が少なかった番号が多く挙がっている。女性のほうが男性より回答者数が多いので、全体的にばらつきが大きいということも理由として挙げられるが、女性は、異性と比べて、同性に対する判断基準が低いということも考えられる。判断基準が低いということは受け入れやすいということであるが、女性は同性をみるときに、まず「女性である」という受け入れやすさが存在するのではないだろうか。

 また女性のアンケートに対する感想の中で、「自分とファッションスタイルが似ている人に『おしゃれ』と判断している気がする」「自分の好きな服装に注目してしまう」というものが多く挙げられていた。これは自分と似ている服装を着ている人に対して親近感が湧きやすいということだろう。しかし「おしゃれ」と判断するには親近感だけではなく、自分と差別化するための相違点を発見しなければならない。それが、もし「自分はこのような服装をしたくない」と感じる相違点であればどうだろうか。それはおそらく「おしゃれ」とは判断されないだろう。それは自分と「趣味が合わない」という親近感を喪失させる感情を持たせる要素となるからである。たとえ親近感を持っていたとしても、共通点を軸にして自分と相手を同一化して考えようとしたときに、自分が着たくない服装をしている人にはなりたくないと考えることは自然である。「自分がもしその服装を着るとしたら」という仮定を無意識の中に立て、「着たい」「着たくない」という判断をしているのではないだろうか。実際にアンケートに回答している人々の反応を見ても、「これいいよね」「これ好き」などの話をしながら、その選んだ番号は「おしゃれ」であると判断していた。やはり「好き」という感覚と「おしゃれ」という感覚は紙一重のようである。したがって、自分が着たいと思っている服装や、こうなりたいと思う女性に対して「おしゃれ」と判断する傾向があると考えられる。

 

終章 まとめ

 

 それぞれの章で、さまざまな仮説が浮かび上がってきた。それぞれが曖昧で不十分なものであるが、「おしゃれ」ということをどのように人々が判断しているかがうっすらとであるが見えてきたように感じる。

 まず「おしゃれ」であるということは、周囲との「調和」が必要ということである。第1章で述べたように、「おしゃれ」には流行と自己主張の両立で成り立っている。流行というのは見慣れているもので、受け入れやすいもの、また取り入れることで簡単に周囲と調和できるものである。また第3章でも述べたが、女性が女性を「おしゃれ」と判断する場合、自分の服装と似た服装を選ぶ傾向があるという点でも、自分と調和できるかどうかが「おしゃれ」と判断する上で非常に重要なのである。

「おしゃれ」と判断する基準は、かなりの個人差がある。「この人は全世界の人がみて『おしゃれ』と感じる」人はこの世に存在しないといえるだろう。それはなぜかといえば、見る側の人がその人と何によって調和できるのかは主観的判断によるものだからである。また調和できる点を見つけたとしても、それがいくつ見つかれば「おしゃれ」と判断する基準に達するのかも、人それぞれの価値判断に委ねられるので、その点が「おしゃれ」の判断を共通認識として理解できない1つの理由になるだろう。

そして「おしゃれ」は一種の憧れではないかと考えられる。自分と似たような服装を選びつつも、自分と相違点が見つからなければ「おしゃれ」とは判断しないだろう。それは第3章でも述べたとおり、自分が「おしゃれ」と判断した服装は「自分が着たいもの」を無意識的に表しているのである。私がアンケートで使用した読者モデルの人々も、確かに読者にとっての憧れとして位置づけされている。実際に私自身も読者モデルの中から自分の好きな服装のモデルを探し、「こんな服装をしてみよう」と参考にしていた。プロモデルばかりではなく読者のお手本になりやすいように、「おしゃれ」そのものを身近に感じやすいように、読者により近い読者モデルを起用しているのであるのではないだろうか。

このように、「おしゃれ」を判断するための要素は多種多様である。しかしやはり一番の根底にあるのは判断する人の主観である。したがって「おしゃれ」「おしゃれではない」という判断は常に曖昧なものである。どのような服装に共感、憧れを抱くのかによって「おしゃれ」という判断はいつでも自由に変化できる。

 

 最後に、今回のレポート作成にあたってアンケートにご協力していただいた方々に心から感謝しています。ありがとうございました。

 

参考文献

 

ジョージナ・オハラ著 深井晃子訳 (1988)『ファッション事典』 平凡社

 

アンケート調査で使用した写真

(ウェブ掲載に当たって顔にぼかし処理を施した)

 

 

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