大阪府立大学人間社会学部人間科学科森岡研究室学生レポート (2007年度)
スーパー戦隊シリーズの子どもに与える影響
〜歴代シリーズの特徴とその傾向〜
正武田貴将
はじめに
私は以前アルバイトでスーパー戦隊シリーズのアルバイトを行った。しかし現在の戦隊シリーズも私が幼い頃見ていた戦隊シリーズと変わらないように思えた。5色のヒーロー、勧善懲悪のストーリー、熱血漢なレッドなどの共通点があるように見えた。しかし映像技術が進んで、美しい画像・迫力のあるアニメを見ている現代の子どもたちであっても、昔と代わらず人間が戦っているという、ある意味アナログな戦隊シリーズのヒーローに見入っていて正義の味方を応援していた。これはどういうことなのであろうか。歴代の戦隊シリーズには何か子どもたちをひきつけるポイントがあるのだろうか、そしてそれは子どもたちにどのような影響を与えているのだろうかと思い戦隊シリーズをテーマに選んだ。そこで本レポートでは「ヒーローの色と性格」「女性の存在」「戦隊の演出方法ついて」を主軸に考察していきたいと思う。
○概略
正式名称は「スーパー戦隊シリーズ」といい現在では1975年に始まった「秘密戦隊ゴレンジャー」を初代とし、今年で31代目になる。当時のヒーローとしては異例の「複数人で戦う」というコンセプトは子どもたちには人気を博したが、大人たちからは「複数で一人の怪人を倒すのは卑怯であり教育上よくない」という意見も出て賛否両論であった。平均視聴率が20%を超えた秘密戦隊ゴレンジャーが2年間放映され、次作「ジャッカー電撃隊」が9ヶ月、休止1年をはさみ1979年から毎年1年に1作品ずつ放映されている。以前は石ノ森正太郎原作の上記2作品以降の作品をシリーズとしていたが、現在では秘密戦隊ゴレンジャーを初代としている。
1章 戦隊の色と性格
○事前調査による色と性格のイメージ
赤:熱血漢・リーダー 黒:クールなライバル・サブリーダー 青:クール又は三枚目 黄:大柄・大食い・力持ち・大らか 緑:穏やか 印象にない 桃:女性
ここにあげたのが代表的な6色である。歴代31戦隊は主にこの6色をベースにしている。
パターン1)「赤、青、黄、桃、緑」 12戦隊(初代ゴレンジャーも含む)
パターン2)「赤、青、黄、桃、黒」 9戦隊(6代目以降で黒を導入)
パターン3)3人or4人戦隊 6戦隊(3人戦隊は全部赤・青・黄)
パターン4)その他 4戦隊(白を使っている)
全31作品に登場している色は赤と青のみである。
○赤について
赤=リーダーという認識が強い。しかし全戦隊が必ずしも赤がリーダーというわけでない。
初期戦隊:レッドを明確にリーダーと設定されている。性格は熱血漢・真面目・強い精神力・みんなから厚い信頼を置かれているというのが通例
中期戦隊:レッド=リーダー論に変化が起こる。17代目「五星戦隊ダイレンジャー」ではリーダー不在⇒5人全員が主役ということが重視。18代目「忍者戦隊カクレンジャー」において初めてホワイトが明確にリーダーと設定(まとめ役)
しかし性格は初期戦隊とあまり変わらない
後期戦隊:レッドの性格に種類が現れる。近年は未熟なレッドが多く登場しレッドの成長物語というものが物語の筋になる戦隊もある。また冷静な大人のレッドというものもある。真面目・強い精神力をもったレッドというものは減ってきて人間味を重視している傾向がある
○青・黒について
青は31戦隊に登場し、黒は14戦隊(途中参加3戦隊)
黒についてはクール・冷静・ちょっと影のある性格。これは青にもみられる傾向であ
るがこの2色が同居するとこの性格は黒の性格となる。ちなみにサブリーダーを務めるのもこの2色であり、ライバルにもなりうる。当初黒は「正義の味方にふさわしくない」という声もあったが予想に反し人気が出て、それまでナンバー2=青という図式であったがそれを黒が奪うことが多くなってきた。一方青は柔軟な役割を示す。以下に青の性格をあげてみる。
・クールで冷静な二枚目サブリーダー
・明るく、みんなに優しく情に厚い一面が見られる ムードメーカー
・女性好き、オシャレで軟派だがやるときはやる
・女性の色
のような性格があげられる。こうした柔軟に対応出来るキャラクターであるということと、男の子も女の子も好きな色(水色含む)ということもあって全戦隊に登場しているのだろう。
○黄色について(29戦隊)
大柄・大食い・力持ちというイメージの強い黄色であるがそのイメージに合う黄色はわずか5人。しかも最後に登場したこうしたイエローは15代目「鳥人戦隊ジェットマン」(1991年)である。つまり我々以下の世代がこうした印象を持つことが少ないはずである。しかしこのイメージを持つ理由として考えられる理由は2つある
・初代「秘密戦隊ゴレンジャー」のイエローがそうであった
・15代「鳥人戦隊ジェットマン」が高年齢層を狙った高視聴率番組であった
ちなみに残りの24人のイエローはクールで頭脳明晰・明るいムードメーカーなど青とよく似た性格がある一方、「未熟なルーキー」という役割を果たす。このキャラが被っている(と思われる)傾向は近年は解消されつつある。
2002年26代「忍風戦隊ハリケンジャー」以降同性のイエローはいない(13代目〜25代目までに8戦隊が同性イエローがいたことを考えれば急に減ったと思われる。黄色=デブという認識がいじめにつながるから?)
この5年間で4戦隊がイエローは女性であり、イエロー=女性という傾向である。
○ピンクについて(23戦隊)
ピンクは全て女性が担当している。6代「大戦隊ゴーグルファイブ」以降女性が必ず登場しているがピンクの登場しない戦隊は白・黄・青が女性の色となる。ピンクとしての性格というものはなく「女性としての性格」が多様に存在。女性2人の戦隊ではその2人のコントラストが際立つ。
○緑について(13戦隊 途中参加3戦隊)
緑の印象は私の聞いたところ「ない」と答えた人が多かった。グリーンに多く見られる傾向としては「最年長」か「最年少」であるということ。心優しい落ち着いた年長者であったり、おっちょこちょいの3枚目というグリーンが多い。そして緑という色のせいであろうか「自然を愛する」という設定もしばしば見られる。ブルーやイエローにもいえるが「無口で冷静」はキレるととめられないというのギャップが人気の秘密かも。
○色という概念がない戦隊
色でキャラクターを分けるという概念が登場したのは4代目からである。それ以前の
戦隊は名前に色がついていない(ゴレンジャー除く)。しかしコスチュームは色がついて
いるため定義的に色を分類することは出来る。
2代目「ジャッカー電撃隊」
トランプが色代わり。スペードエース・ダイヤジャック・ハートクイン・クローバー
キングの4人戦隊(後に一人追加)
3代目「バトルフィーバーJ」
世界各国からヒーローを集めたという唯一の国際派戦隊(ピンクは本当にアメリカ人)
バトルジャパン(アジア代表:赤) バトルコサック(ユーラシア代表:黄)バトル
フランス(ヨーロッパ代表:青) バトルケニア(アフリカ代表:黒っぽい) バトル
アメリカ(アメリカ代表:ピンク)
以上を踏まえ、この性格を見てみると熱血で真面目なレッド・クールで冷静なブルーと
ブラック・明るいムードメーカーのイエロー・優しく穏やかなお兄さん的グリーン・温
かくみんなを見守る紅一点ピンクといった戦隊ならば、様々な性格の5人が長所を出し
合ってまとまりを持って戦うという図式は、子どもに好印象であろう。それぞれ自分に
望む性格に感情移入して子どもは見ることが出来る。「各々の個性を生かし、自分の役割
を果たす」ということが戦隊ものが子どもたちに教えることの1つであるだろう。
2章 女性の存在について
スーパー戦隊シリーズの戦士の中に必ずいる女性。前述の通りピンク色をカラーとしているのだが、女性という存在は戦隊の中においてどのような役割を担っているのであろうか。また敵の組織の中にいる女性幹部についてもその立ち位置を考察していきたい。
女性の人数(数字は代目)
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0人 |
5 |
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1人 |
1 2 3 4 6 7 12 13 16 17 18 22 23 24 25 26 27 31 |
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2人 |
8 9 10 11 14 15 19 20 21 28 29 30 (0人:1戦隊) (1人:18戦隊) (2人:12戦隊) |
上の表を見るとまず目に付くのが女性0人戦隊が存在していたということである。5代目の「太陽戦隊サンバルカン」には女性がいない。これだけを見れば非常に男臭い戦隊シリーズであったように思えるが実は際はそうではない。それは敵方に女性が多く存在していた。
まず敵の大ボスがヘドリアン女王という女性であった。さらにゼロガールズと呼ばれる女性型メカ人間という設定の女性が存在していた。しかもこのゼロガールズは露出度の高い服を着ている。だから「お色気」という要素も組み込まれていて正義と悪の間で男女のバランスが保たれているのだろう。女性的幹部は後述にあるが、3代目以降(敵組織自体なかった28代目)必ず存在しているのだが、このゼロガールズといういわば悪の戦隊は悪=男、女性=清純で正義という概念を壊そうとした存在であるだろう。
そして意外と女性1人戦隊が多い。特に初期はほとんど一人である。女性の性格をみると1人戦隊の女性は冷静・クールという女性が多かった。私が実際に見て思ったのは、前述の女性戦士が1人の初期戦隊の中では7戦隊中6戦隊の女性の性格が、冷静でおしとやか、頭脳派といったものであった。これは当時の時代背景として求められた女性の姿をそのままヒロインに投影していたのだろう。後期戦隊を見ると3人戦隊の女性の性格は往々にして「冷静タイプ」である。これは活発に無茶をする男性を引きとめ、戦隊のバランスを保つという意味で女性は役割を担っているのだろう。次に女性2人タイプの戦隊であるが、このタイプの登場は戦隊シリーズのヒロイン像の幅を大きく増やしたといえるだろう。初めて女性戦士が2人になったのは8代目の超電子バイオマンである。この二人の性格をあげてみると、イエローは気が強くて負けず嫌いでありピンクはおっとりとしたお嬢様タイプである。このコントラストは女性2人戦隊では必ず見られることであり、現在まで続いている。この2ヒロインの誕生はバイオマンで登場する女性脚本家の影響が大きく表れているといえるだろう。初期戦隊の女性にも該当することであるが、女性の性格が時代の影響を強く受けていることは現在にも言える。2004年に流行語大賞に「萌え」という言葉がノミネートされ2005年にユーキャン流行語上位10作にノミネートされた。そうした萌えの対象となるいわば「天然」系のヒロインが登場し始めたのも2004年の28代目「特捜戦隊デカレンジャー」からである。「天然系」がかわいいとされる時代背景を受けて29代目のマジピンク、30代目のボウケンイエローもそれである。このような変化を受けて続いてきたスーパー戦隊シリーズであるが、女性戦士とは存在がまず画期的であった。それまでは仮面ライダーなどヒーロー番組は存在していたがターゲットは完全に男の子であった。しかし秘密戦隊ゴレンジャーのモモレンジャーの登場は女児からの人気を集め、この番組の最高視聴率は25%という驚異的なものであった。(最近のスーパー戦隊シリーズの平均視聴率は10%前後)こうした作風の幅の広がりは同じくターゲットの幅も広げた。さらにそれまでのヒーロー番組は男性=格闘で女性=サポート、格下のヒーローの相棒、サブキャラといった男女差別が否めない設定(女性は男性に頼らないとならない)であった。しかしスーパー戦隊シリーズでは女性も男性と対等に戦える戦士として設定されている。たとえ個性的に能力が低くなる戦隊があっても、5人が揃わないと必殺技を出せなかったり、ロボットに合体できなかったりと必要不可欠な存在であることは間違いない。女性の進出が具体的に現れているのは18代目の「忍者戦隊カクレンジャー」であろう。これは女性は1人の戦隊であるが、そのニンジャホワイトは戦隊のリーダーであり、戦闘能力も一番高いという設定である。演出上レッドが中心になっているように見えるが、格下の相棒とされていたスーパー戦隊以前のヒーロー番組から見たら、女性の大躍進であり女性も男性同様・それ以上に戦えるというのを色濃く表現されている。そして戦いの中で女性は、5人の個性が現れる戦隊シリーズにおいて女性としての役割や能力を発揮している。例えば華やいだ雰囲気をチームの中にもたらしたり、頭脳面で能力を発揮して戦闘に参戦するなどして個人の能力を発揮している。モモレンジャーは場を華やかにさせるという女らしさを持っている一方で、武器開発や爆弾処理のエキスパートとして女性っぽくなさを兼ね備えていた。そうしたギャップも視聴者に受け入れられた要因であると考える。
○敵組織の女性幹部について
ヒロインを登場させたことが視聴率の上昇につながったのならば、敵の女性幹部を出すこともまた人気が出る要因であろう。まず服装から見ていくと、初期戦隊では初めて女性幹部が出てきた3代目「バトルフィーバーJ」のサロメという女性幹部をはじめ腕や胸元、足などといった露出度が非常に高い。こうした服装は戦闘には不向きであるような設定であるが、男の子ではなく男性をもターゲットにしていたのであろう。しかしその後8代目から約10年間こうしたセクシーな衣装を着た女性幹部は現れなくなった。この間の女性幹部の服装は、重厚な鎧をまとっていたり、邪悪な雰囲気を感じる服を全身に来ていて「カッコイイ」という印象の受けるものである。その後はこのセクシーとカッコイイを両方兼ねそろえたような服が20代目「激走戦隊カーレンジャー」から見られるようになった。さらに後期戦隊になるとこうした服装にも再び変化が現れるようになった。それは「オシャレ」というタイプである。今までの戦隊シリーズの女性幹部の服装は非現実的な形をしていたが、この「オシャレ」というのは現代の服装を敵キャラっぽくデフォルメされている印象を受ける。29代目「魔法戦隊マジレンジャー」に見られるナイとメアのゴスロリをモチーフにしたファッション、30代目「轟轟戦隊ボウケンジャー」の風のシズカのブルーのワンピースと蝶ネクタイ、ブーツといったものがあげられる。こうした「カッコイイ」という服装や「オシャレ」な服装に子どもは憧れを抱き親しみやすい存在であるだろう。次に女性幹部の性格であるが、残忍・冷酷・狡猾・卑怯といった性格が見られ熱く激しい怖さを持つ男性と対照的な恐怖を表している。それが中期戦隊になると少しずつ変化が現れている。女性幹部にも正々堂々や恋愛などストーリーが持たれてきている。味方をかばって死ぬキャラ(電撃戦隊チェンジマン)や改心したキャラ(光戦隊マスクマン)なども現れてきている。更にはレッドの同級生や元恋人が女性幹部になり戦うというストーリーもあった。こうした善と悪が明確になっていないキャラクターの存在は子どもの視聴者に色々なことを考えさせるだろう。ただ戦って勝つことだけがよいのではなく、時に敵ですらも同情することで様々な面から物事を考えられるようになれるのかもしれない。そういう点では女性の敵というのは感情移入しやすい格好のキャラクターだったのかもしれない。こうしたストーリーを背負ったキャラクターから後期戦隊では人間味のあふれるキャラクターに移行を始めた。なかなか上手くいかなかったり贅沢が好きであったなど人間の性格も反映されている。26代目の忍風戦隊ハリケンジャーでは宇宙コギャルというキャラクターや上記の29代目魔法戦隊マジレンジャーのパンクな性格など反映されているところは多い。こうした点はニーズの変化が出てきていて、時代背景に対応してきた設定であるのだろう。
○恋愛について
女性が登場するということは男性本位であるスーパー戦隊シリーズにおいて、恋愛要素も導入されてきた。それまで女性=仲間であった戦隊シリーズにおいて、初めて複雑な恋愛要素を折り込んだのは15代目鳥人戦隊ジェットマンである。調査したこの恋愛模様を記してみる。イエローとブラックがホワイトに恋愛感情を抱く→しかしホワイトはレッドのことが好き→レッドは元恋人の女性幹部マリアのことが忘れられないという四角関係が出来上がっていった。ストーリーも恋愛が中心にすすんでいたように見えた。実際に最終話ではレッドとホワイトが結ばれ、ブラックはそれを影で祝福して去っていくというドラマのような展開であった。こうした関係描写は一見子どもには不適切であるように思われるが、子どもの成長発達には必要であるだろう。幼ながらに「人を好きになる」ということはどういうことかを学ぶことが出来るし、子どもがそういう恋愛にも興味を持っていることも事実であろう。事実視聴率が低迷していた戦隊シリーズを持ち直すことにも成功した。そしてこのジェットマンで気づいた特徴的な要素はジェットマンに変身した後も「レッド」などの呼び方はせず変身前の本名で呼び合っていることである。これは恋愛中心のストーリーと大きく関連しているだろう。任務遂行のためにチームの仲間を救うという業務的な内容であり、変身後は一個人ではない印象を受けた。しかし名前で呼ぶということは変身しても関係は変わらず、好きな人を守っているような印象を受けた。こうした演出のために変身後も本名で呼び合うというスタイルが確立されたのだろう。
3章 スーパー戦隊シリーズの演出
○5対1の戦闘について
スーパー戦隊シリーズが誕生した当時、仮面ライダーなどの戦士は1対1で敵と戦っていた。その姿は正々堂々としていて視聴率を集めた。しかし戦隊シリーズはその概念を根底から覆していた。能力の同じ5人の戦士が怪人を攻撃しているという一見リンチのようにも見えるこの戦闘シーンは子どもたちに悪影響を与えると思われる。事実、スーパー戦隊シリーズの開始当初は批判を受けていた。だが私が実際に視聴してみたところ「卑怯」「えげつない」といった印象は受けなかった。戦闘員がいるのであれば、レッドなどの話の中心人物がボス的怪人と1対1で戦い、他の4人(又は5人)は戦闘員と戦う。では戦闘員がいない場合はどうなのであろうか。そこで28代目特捜戦隊デカレンジャーの31話の戦闘シーンを見ていく。
怪人が現れる→レッド・ブルー・グリーン・ホワイトVS怪人という4対1の構図→怪人の一斉攻撃に全員が光線のようなものを受ける→肉弾戦になる(レッド・ホワイト・ブルーの順番に攻撃して返り討ちにあう)→レッドの銃激も跳ね返され再びレッド・ホワイトと怪人の肉弾戦→順番にやられる→ピンクとイエローが登場し二人同じ方向からのジャンプキック→怪人の一斉攻撃の光線をガード→ピンクと怪人の1対1の肉弾戦→ピンク優位で戦闘が進む→みんなで攻撃をする→ホワイトのパンチ→ブルー・グリーンの同じ方向からの剣攻撃→レッドの銃撃→ピンク・イエローの同じ方向からの剣攻撃→巨大化
こうした展開であるが私なりに見解を出す。まず4対1という圧倒的に戦隊が優位な状況でも一度は不利な状況に陥る。そういう演出をすることで敵が4人でもかなわないほど強いという印象を植えつける。次に肉弾戦であるが、挟み撃ちなどの様々な方向からの一斉攻撃はしない。それは敵の逃げどころをなくす攻撃であり卑怯に映ってしまうからであろう。だから肉弾戦では順番に攻撃して、(もし負ける場合は)順番に敵の攻撃を受ける。2人で攻撃する場合には同じ方向から攻撃するのである。同じ方向から攻撃するのは1人で攻撃するのと変わらないのであるから戦術としては無駄である。一人と戦っているのと変わらない状況であるのならば卑怯ではないのである。そして最も大切な演出は優位に肉弾戦を進めるときには順番に攻撃することである。テンポよく攻撃することで戦隊シリーズで最も大切なチームプレイを強調し、1対1の構造を作り出しているのだ。だから卑怯には映らないのである。正義の味方の人数が増えても正々堂々という点は仮面ライダーのような1人で戦うヒーローと変わらないのである。
○チームプレイの強調
戦士は1人では怪人に勝てないというのがスーパー戦隊シリーズの大前提である。前述の女性の役割と同様に、5人がそれぞれの短所を補い、長所をよせあつめて戦っている。一人ひとりの重みは全員同じであるため巨大ロボに合体する時や必殺技を放つときには全員揃っていなければならない。そして名乗りのポーズは全員揃っていなければ行わない。しかもスーツも同じである。これはいわば集団競技と同じである。この演出を通じて子どもの視聴者は他人と協力することを学び、自分の個性を生かし役割を果たすことで集団の中で順応できるようになるだろう。そして中には設定が兄弟という戦隊もある(地球戦隊ファイブマン 救急戦隊ゴーゴーファイブ 魔法戦隊マジレンジャー)。特に魔法戦隊マジレンジャーは最終的に父親と母親も同じく戦い、ブルーが結婚し新しい家族が増えるというまさに「家族愛」の設定である。2005年に放映された魔法戦隊マジレンジャーは少子化の中で兄弟が多いということは素敵であるというメッセージをこめてという設定であると塚田英明プロデューサーは言っていた(http://mobgw.tv-asahi.co.jp)こうしたチームプレイのみならず家族関係も強調しているスーパー戦隊シリーズは大人が見てもこうしたメッセージ性を感じることができるだろう。
○ターゲットとなる年齢層の拡大
スーパー戦隊シリーズが始まった当初はその設定やストーリーが単純明快でありわかりやすいものであった。しかし時代が進むにつれて視聴者の子どももそれに物足りなくなってきたのもあるのであろうが、設定を複雑にすることで視聴者の拡大に成功した。ではその変遷となったシリーズを見ていく。
初代:秘密戦隊ゴレンジャー
ゴレンジャーVS黒十字軍の対立構造(正義VS悪)・・・
黒十字軍の行うことはかならず「悪事」であり彼らは「人類社会の破滅」を目的としている。(その経緯など特に現れてはいない=悪にサイドストーリーは存在しない)黒十字総統の下。OO仮面という怪人が現れる。ゴレンジャーの五人はイーグル日本支部という組織の隊員であり戦いのための仲間である。
15代目:鳥人戦隊ジェットマン
・レッド以外は民間人(第一話でジェットマンになることになる)・・・それを逆手にとってブラックは不良で遊び人という設定
・前年の地球戦隊ファイブマンの低視聴率(バブル崩壊によるおもちゃ不振も)の打破のため「恋愛」という要素の導入(前述の四角関係)
・敵内の4幹部によるボスの座を狙う権力抗争(サイドにもいろいろ感情が絡み合い、そこも見所の1つ)
29代目:轟轟戦隊ボウケンジャー
・3つの悪の組織(ボウケンジャーを含めた4組織で対立し「プレシャス」という宝を争っている)を相手にしているが「敵を倒すことを目的としない」戦隊である。そのため目的を達成した際は敵を目の前に撤収することもある。
・イエローは記憶喪失の少女→ストーリーが進むにつれて正体が明らかになる
・レッドーピンク、ブラックーイエローの恋愛模様
・複雑な過去をもったシルバー(人類と人類を嫌う種族のハーフという設定)
・イケメン俳優と呼ばれる役者の起用
ボウケンジャーに限ったことではないが近年のスーパー戦隊シリーズには多く起用されている傾向にある。グラビアアイドルとして活躍している女優を敵役に使う
こうした変化を辿り、戦隊シリーズは「子どもの見るもの」から「親子で見るもの」というシフトチェンジを図ってきた。さらに30周年を迎えた戦隊シリーズであるため、子どものころ見ていた戦隊シリーズを今子どもと見るという親が増えてきているのだろう。大人が見ても飽きないストーリーや設定。そしてその大人のように嗜好が昔と比べて大人びてきた子ども。この両世代の変化に順応するために戦隊シリーズは複雑化してきたのだろう。
おわりに
本レポートを通じて私はスーパー戦隊シリーズの設定には視聴者が飽きないような工夫が多くしてあるということが分かった。そしてそれは子どもたちが見るということを大前提に置き、子どもの成長発達にマイナスにならないような配慮があった。正義の味方は正々堂々としていなければならず、そのための演出方法がとられていた。各人が自分の長所を持ち寄り短所をカバーすればみんなで大きな力が発揮できるというようなメッセージもこめられていた。その中で女性も独特の役割を果たしていたし、番組の構成にも影響を与えていた。色という角度から戦隊を見るとそれぞれ共通項があり、それが個性となって番組によい刺激を与えていた。このように何気ないポイントにも気を配って観賞すると子どもたちがより楽しく見れるように、そして社会に上手く順応してより良い大人になれるようにスーパー戦隊シリーズは進化していた。子どもは戦隊から無意識のうちに学ぶのである。こうしたある種の教育番組としてスーパー戦隊シリーズは今後も愛されていくのだろう。
参考文献
「30大スーパー戦隊超全集」 小学館 2007年
「特捜戦隊デカレンジャー超全集 上巻」 小学館 2004年
「特捜戦隊デカレンジャー超全集 下巻」 小学館 2005年
「空想科学読本4」 柳田理科雄 メディアファクトリー 2006年
「全スーパー戦隊完全超百科決定版」 講談社 2004年
参考DVD
「スーパー戦隊 THE MOVIE Vol.1」 東映 2004年
「スーパー戦隊 THE MOVIE Vol.2」 東映 2004年
「スーパー戦隊 THE MOVIE Vol.3」 東映 2004年
「スーパー戦隊 THE MOVIE Vol.4」 東映2004年
「バトルフィーバーJ Vol.1」 東映 2007年
「電子戦隊デンジマン Vol.4」 東映 2004年
「太陽戦隊サンバルカン Vol.3」 東映 2005年
「鳥人戦隊ジェットマン Vol.1」 東映 2005年
「鳥人戦隊ジェットマン Vol.5」 東映 2005年
「特捜戦隊デカレンジャー Vol.8」 東映 2004年
「魔法戦隊マジレンジャー Vol.12」 東映 2006年
「轟轟戦隊ボウケンジャー Vol.10」 東映 2007年
参考URL
「スーパー戦隊ネット」 http://www.super-sentai.net/
「テレビ朝日」 http://www.tv-asahi.co.jp/
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