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作成:森岡正博 
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恋愛論批判序説〜あるいは、夜叉った時に大塚図!

大塚健祐

 私は、恋愛は苦手(嫌いなわけではない)だが、恋愛論は得意である。
 恋愛は語るべきものではなく、するものだ、などと言い古された言葉を使う
輩には、君は動物だが俺様は人間なのだと言ってあげよう。人間は語って記し
たからこそ動物ではなくなったのである。
 それは人の不幸の始まりかも知れないが、私は人間で良かったと思っている
のだ。

 さて、この恋愛という言葉がまずもってマズい。誤解の元である。まったく
もって定義が曖昧なのだ。「好き」という単語も同様である。
「好きとか、嫌いとか、最初に言い出したのは、誰なの」というのは恋愛シミ
ュレーションゲーム『ときめきメモリアル』の主題歌であるが、まさに言い得
て妙だ。
 ここでは、さまざまな感情が味噌も糞も一緒にされてしまっている。

 私は小学生時代より友情と愛情の違いについて思索を重ねてきたが、先頃つ
いに結論にたどり着いた。
 それは、同じ感情である場合も、まったく関係ない感情である場合もある、
という、たどり着いてみれば当たり前の話である。しかし、当たり前のことを
当たり前だ!と力強く言っていくことも、今はまだ必要な時だろう。
 さらに、数少ない恋愛経験なぞを重ねる中で産まれてきた疑問が、愛情と欲
情の違いについてである。
 これについての回答は、実は当初よりわかっていた。
 これも、同じ感情である場合も、まったく関係ない感情である場合もある。
 私は初恋の人を猛烈に愛していたし、厚い友情も感じていたが、まったく欲
情をしなかった。しかし頭の中では、愛情を感じている人としかベッド・イン
はしたくないなぁ、とも思っていた。また、愛情を抱いていない相手に欲情す
るなど、日本の男の間では当たり前のことであろう。

 こういった常識的な前提から、私は画期的なひとつの図を発案した。
 それが大塚図である!

           ┌──愛情──┐
           │   A   │
         ┌─│────┐  │
         友 │D ┌──│─│─┐
         情  │  │ G │E │ 欲
         │B └──────┘ 情
         │   │ F  │    C │
         └──────┘    │   Ben-Ohtsuka Figure
             └──────┘          1998

(注:本来ならば、愛情・友情・欲情をそれぞれx軸・y軸・z軸に対応させ
 た3次元グラフにするのが正確なのだろうが、見やすさのためベン図とした)

 誠にヘテロセクシズム的な姿勢ながら、わかりやすさを重視し、以下異性愛
の男女の例を挙げて説明したい。

 A 愛情だけ。一目惚れ系か? 崇拝に近いかも。
 B 友情だけ。男女間の友情。仲の良いセックスレス夫婦とか。
 C 欲情だけ。買春の一部はコレか。スポーツ的なる性交?
 D 友愛。友情から愛情へ。or 愛情の内に友情が芽生えた。
 E 愛欲。100分で起承転結するハリウッド映画の常套手段。演歌の世界。
 F 欲友。男女間の友情とプレイの両立。
 G 愛欲友。黄金の三情一体、ヤングアダルト少女マンガのイデオロギー。
  或いは欲友愛。「全人格的コミュニケーション」としてのセックス??

 FとGの欲友、愛欲友・欲友愛とは私の造語である。
 また、「男女間の友情とプレイの両立」というフレーズは、私の先輩であり
友人でもあるペペ長谷川氏が、歌謡ユニット『男女間の友情』で歌った歌の一
節だ。
 彼は実に説得的なフレーズをつくる卓抜した言語能力を持った人物だが、こ
の図に対しては「夜叉った時に大塚図」というフレーズを考えてくれた。

 お互いが恋愛関係にあると思っている二人でも、お互いが相手に抱いている
感情がすれ違うと、大変怖ろしいことになりがちである(これを「夜叉る」と
呼ぶ)。
 この原因の大きなひとつに、お互いの「愛が」何処に向けられているかがわ
かっていない、という点が挙げられるだろう。
 例えば、片方が Dや Gといった、友情的なものも含めた恋愛関係だと思って
いたにもかかわらず、片方がE、はなはだしきはCの感情でつきあっていたとし
たら、
「あなたは私のカラダだけが目当てだったのね! き〜っ!」
 という台詞で代表されるような結末に終わる可能性は高い。

「おかしいな」と思ったとき、この大塚図を取り出し、二人で自分の位置を率
直に指し示してみて欲しい。その際、なるべく大きな紙に書かれた大塚図を用
意すると、お互いの相対的な位置がより鮮明になるだろう。
 お互いの誤解に気づいたなら、関係を清算するもよし、つきあい方を変えて、
自分の感情の満たされない部分は別の対象に向けるのもよし、すりあわせを行
って軟着陸地点をさがすのもいいだろう。

 お互いの誤解を解くツールとして、あるいは場を沸かせるお笑いネタとして、
ぜひ大塚図を活用して欲しい。

 なおこの図はシェアウェアです。試用期間は一ヶ月、気に入った場合は使用
料として年額五千円を以下の口座に(以下略)。
 

/大塚けんすけ(RXC07341@nifty.ne.jp)
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(copyleft(c)1994 ペペ長谷川@男女間の友情)
(copyleft(c)1998 大塚けんすけ@早稲田大学セクシュアリティ研究会)