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作成:森岡正博 
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臓器移植法を考える

 

臓器移植法改正を考える

2000年10月から始まった移植法見直しについて

 

Last Update:2009年9月21日

目次
1 趣旨
2 町野改正案全文と、すでに出されている対案New!
3 臓器移植法改正関連サイト・掲示板・資料集New!
4 集会・シンポジウム開催案内New!
5 ヒト組織・クローン規制法・ES細胞New!
6 関連資料および海外の現状New!

特報


子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言」(森岡・杉本案)公開版公式発表!(2001年2月14日)森岡正博と杉本健郎の共同提案になりました。今後の議論のための、改正原案です。森岡・杉本案についての新聞報道はこちら。議論は専用掲示板で行なっています。

『中央公論』2001年2月号の拙論「日本の「脳死」法は世界の最先端」(全文)をぜひお読みください。

長期脳死児:診断後1カ月以上60人 全国病院調査(毎日新聞 2007年10月12日)

 脳死状態と診断された後、1カ月以上心停止に至らない「長期脳死」の子どもが全国に少なくとも60人いることが、全国約500病院を対象にした毎日新聞の調査で分かった。長期脳死児がこれほど多数に上ることが明らかになるのは初めて。臓器移植法は15歳未満の子どもからの臓器提供を認めていないが、年齢制限を撤廃する法改正案も国会に提出されており、議論を呼びそうだ。調査は今年8〜10月、日本小児科学会が専門医研修施設に指定する計522施設を対象に実施。医師が脳死状態と診断後、医療やケアを提供中の長期脳死児(診断時満15歳未満)の有無などを尋ね、272施設(52.1%)から回答を得た。その結果、診断から1カ月以上経過しても心停止に至らない患者は39病院の60人で、うち14人は在宅療養中だった。年齢は2カ月〜15歳7カ月で、診断後の期間の最長は10年5カ月だった。
 このうち、25病院の31人は、法的脳死判定基準か、旧厚生省研究班が00年にまとめた小児脳死判定基準の無呼吸テストを除く全項目を満たしていた。臓器提供をしない場合は必要ないため、他の患者は全項目の判定はしていないが、主治医が脳死とみられると判断した患者だった。臓器提供を前提に、小児脳死判定基準が妥当だと思うかとの問いには、回答した医師270人のうち42%が「分からない」とした。理由は「長期脳死児を『死者』として受け入れることは、家族だけでなく医療者側も難しい。移植の道を閉ざすことはできないが、一定の配慮が必要」など。「妥当でない」は17%、「妥当」は12%だった。法的基準を作った際の調査では、子どもの場合、脳死から10日程度で心停止に至るとされた。だが、小児の基準を検討した旧厚生省研究班の調査は、87年4月からの12年間に長期脳死児が25例いたことを報告。日本小児科学会の04年の調査でも18例が報告された。子どもの脳は障害に強いとされるが、原因の究明などは進んでいない。
 法改正に関しては(1)脳死を一律に人の死とし、提供年齢制限を撤廃、家族同意のみで提供可能にする(2)提供可能年齢を12歳以上に引き下げる−−の2案が出されている。同学会の調査を担当した小児神経科医の杉本健郎・びわこ学園医療福祉センター統括施設長は「これまでの調査よりかなり多い結果だ。臓器提供を否定はしないが、脳死診断後も長く心停止に至らない子どもが多数いることを厳粛に受け止め、単なる『死』と片付けずにオープンな議論をすべきだ」と話している。【臓器移植取材班】(ソース

「脳死」判定後、6年間心臓が動き、成長した7歳の男の子(中日新聞・東京新聞 2006年12月23日)

 臓器移植に関心が高まる陰に、脳死診断後に一カ月以上生きる「長期脳死」という状態の子どもたちがいる。国内での小児臓器移植を可能にする臓器移植法改正の前提を覆すような事例にもかかわらず、その存在はほとんど知られていない。 (井上圭子)
  A君(7つ)は一歳半の時、原因不明の高熱で急性脳症となった。医師からは「大人なら脳死の状態」と宣告されたが、六年後の今も、人工呼吸器を付けて「生きている」。
  発症後三カ月は肺炎などの合併症を繰り返したが乗り越え、やがて状態は安定。四歳で退院した。母親はA君の皮膚を清浄綿でふき、半開きになるまぶたを閉じて目の乾燥を防ぐ軟こうを塗る。たんを吸引し、三時間に一度の体位交換。栄養は鼻のチューブから。「苦には感じない。毎日一緒にいられることが幸せ」と母親は言う。
  この六年間で身長は三六センチ伸び一一〇センチに、体重は七キロ増え一六キロに成長、顔つきもすっかり男の子らしくなった。暑ければ汗をかき、排便時は顔を真っ赤にして踏ん張る。注射針を刺すと体をよじる。この五年間に受けた臓器移植法に基づく脳死判定では、無呼吸テスト以外のすべての検査で脳死の要件を満たしたのに、である。
  「Bちゃん、お客さんにごあいさつしようね」。母親に促され、記者がB君(10)の手に触れると、B君は温かい手でギューッと握り返してきた。
  四年前、B君は交通事故に遭い、頭蓋(ずがい)内に血液があふれ脳圧が異常に高くなる「急性硬膜下血腫」と診断された。緊急手術でも意識は戻らず、一カ月後「もう脳死に近い状態。手は尽くした。あとはご家族で静かに見守って」と言われた。だが二カ月後、だらんとしていた手がピクッと動き、浅い自発呼吸も戻った。事故から一年後、奇跡的に退院できた。
  今も瞳孔は開いたままで脳波もないが、母親は自信に満ちて言う。「この子のおかげで家族や友人と命について真剣に考えるようになった。出会いもあった。この子の存在が家族の幸せ」
  二〇〇四年に日本小児科学会が全国の救急病院などを対象に行った調査によると、小児脳死七十四例(疑い含む)のうち、脳死状態と判断してから心停止まで三十日以上かかったケースは十八例(24%)あった。人工呼吸器など医療技術の進歩もあり、長期脳死例は新たな問題として浮上している。家族にとり「脳死を人の死」とする同法の考え方は受け入れがたい。
  日本移植学会によると、脳死からの移植を前提とする心臓・肝臓移植の希望待機者は二百二十九人(先月三十日現在)いる。小児も含め臓器移植を進めるため、与党はドナーの年齢制限撤廃などを盛り込んだ同法改正案をまとめた。
  だが、松本歯科大学の倉持武教授(倫理学)は「脳死のドナーが豊富な社会なんて、逆に異常だ。脳死を一律に死と認めれば、死の解釈は移植の大義名分のもと植物状態、重度脳障害へと拡大していく」と警告する。
  渡航費用の寄付を求める移植希望者家族と比べ、長期脳死の子の家族の声は世の中に届きにくい。ある母親は「社会に説明しなきゃという気持ちと、やっぱり怖いという気持ちと」と心は揺れる。「ドナー不足」という言葉が「臓器をくれ」に聞こえるという。
  「難病の子を救おうと臓器を求める親の思いも分かる。ただ、ドナーになる子の立場も知ってほしい。それだけ」

「超重症児」長期生存も、自発呼吸や体温調節回復例(2007年12月18日 読売新聞)

  「脳死」「脳死に近い」などと診断された子どもが何年も生きるケースが少なくない。自発呼吸などが回復する例も目立ち、脳死診断のあり方を見直す必要がある。(大阪科学部 山崎光祥)
 子どもの脳死で長期生存例がしばしばあることは、学会などで報告されていたが、実際の病状や生活の様子はほとんど知られていない。
 そこで記者は今秋、出産時のトラブルによる心肺停止や頭部外傷、脳炎などで深刻な脳障害に陥って意識がなくなり、人工呼吸器を装着した「超重症児」の家族にアンケートを行い、14人(存命9人)の両親から回答を得た。
 その結果、明らかになったのは、「脳死状態」などと絶望的な診断を受けた後も、何年も心臓が動き続けることが珍しくないばかりか、脳の機能が若干でも回復した例がかなりあることだ。
 14人のうち、8人は診断時に脳機能の兆候がなく、脳死または脳死に近い状態とされ、6人は若干脳機能が残っていたが脳死に近い状態などと言われた。リスクを伴う無呼吸テストは誰も受けていないため、正式な脳死判定ではないが、脳機能の兆候のなかった8人とも身長が伸び、うち6人は自発呼吸、脳波、刺激への反応、体温調節のいずれかが、多少なりとも回復していた。4人は歯が生え替わった。
 14人全体で見ると症状の改善は11人にのぼり、子どもの脳の回復力の強さを改めて示した。東海地方の男児(11)は6歳の時にひき逃げ事故に遭い、「脳死に近い」として、3週間で積極治療が打ち切られたが、1か月余りたって自発呼吸がわずかに戻った。
 こうしたケースは何を意味するのだろうか。脳死の定義は「全脳の不可逆的な機能喪失」だ。無呼吸テストが行われていないので、現在の脳死判定基準の不備には直接にはつながらないが、「脳死」という言葉が、安易に使われている実態がうかがえる。
 6歳未満の脳死判定基準の作成に携わった杉本寿・大阪大教授(救急医学)は「治療が始まって間もないのに、回復不能だと親に納得させるため、拙速に『脳死』と説明される例が多い」と危ぶむ。必要な検査をしていないケースのほか、脳に作用する薬の影響は考慮したか、脳波検査の感度が十分だったかといった疑問があり、脳機能が残っていたのに見落としていた可能性があるという。そうした不十分な“脳死診断”でも積極的治療の打ち切りにつながるし、人工呼吸器を取り外して腎臓提供が行われることもある。先の東海地方の男児の家族は、主治医から「看病の負担を考えて呼吸器を外しては?」と勧められたという。
 「脳死」という言葉は、親を絶望に突き落とす。それでも家族は愛情を持って子どもたちを育てている。14人のうち11人は在宅療養を継続中か、または経験した。最長は11年を超える。
 関東地方の男児(8)は、1歳2か月の時に高熱とけいれんに襲われ、無呼吸テスト以外のすべての検査を経て「臨床的脳死」と診断された。脳血流が全くなかったが、3年半前に退院し、その後も感染症などによる命の危機を乗り越えてきた。身長は発症時から30センチ以上伸び、乳歯6本が永久歯になった。鼻の粘膜に吸引用の管が当たると痛そうに首と肩を動かし、最近は体温があまり下がらなくなったという。主治医は「体温をつかさどる脳の視床下部が多少、機能を取り戻した可能性はある。体の動きは脳の活動とは考えにくい」と慎重だが、母親は「どんなにつらくても治療に全身で反応して戦っている。生きているのは息子の意志」と話す。神戸市東灘区の男児(4)も、1歳半の時に肺炎から呼吸困難に陥り、「臨床的脳死」と診断された。症状の改善は見られないが、今年6月から在宅療養に移り、車いすで散歩に出ることもある。「この子がいるだけで家族が笑顔になれる」と母親は話す。
 国会には、15歳未満の子どもからの脳死移植を可能にする臓器移植法改正案が提出されているが、審議では、子どもの脳死の実態や判定基準の妥当性なども検証すべきだろう。親への説明のあり方も考え直す必要がある。

子どもの長期脳死についてのその他の記事は、てるてる日記にまとめられています。

「脳死」の乳児、判定6日後呼吸戻る 近畿大病院 (朝日新聞 2006年06月03日00時03分)

 近畿大病院救命救急センター(大阪府大阪狭山市)で、厚生労働省研究班の小児脳死判定基準で脳死と診断された5カ月の男児が、診断6日後に自発呼吸が一時的に戻り、その後4年3カ月間生存していたことがわかった。回復力の強い乳児では、正確な脳死判定が難しく、「現在の基準では不十分」との声も出ていた。この基準見直しの動きや、子どもの脳死移植を実現しようと国会に提案された臓器移植法改正案にも影響を与えそうだ。富山市で開催中の日本脳死・脳蘇生学会で3日、発表される。
  同センターの植嶋利文講師によると、男児は98年秋、心肺停止の状態で搬送された。厚労省研究班が98年に作った6歳未満の小児の脳死判定用の仮基準に従い、搬送20日目と24日目に診断を実施。その結果、自発呼吸や脳幹反射など五つの検査項目すべてで反応がなく脳死と診断した。
  しかし、脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き、30日目ごろからは、一時的に弱い自発呼吸が戻ることもあった。ただ、人工呼吸器をはずせるほどの呼吸は戻らず4年3カ月後に肺炎などで死亡した。植嶋講師は「脳の血流検査など、新たな判定項目の追加検討が必要」と指摘している。 (記事中「脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き」の箇所は記者の認識不足。安定する脳死患者は多数いる。森岡註)→その後、無呼吸テストをしてないという理由で学会発表予定が取り消された。(移植目的でないと無呼吸テストはできない)

脳死:米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復 (毎日新聞 2006年7月26日15時00分)

 米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。>>すべて読む

脳死宣告から4カ月後、意識を取り戻した青年(AP通信 2008年3月24日)

 脳死を宣告されてから4カ月、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、ザック・ダンラップさんは意識を取り戻した。三輪バギーで交通事故に遭ったダンラップさんは、11月19日、テキサス州ウィチタフォールズのユナイテッド・リージョナル・ヘルスケア・システムで脳死を宣告された。彼の家族は彼の臓器を提供することに同意した。親族が最後の別れを告げにきたとき、彼は足と手を動かした。彼はポケットナイフによる足や爪への刺激に反応を見せ、48日後、家へ帰ることができた。現在も自宅で回復中だ。>>すべて読む

脳死宣告後、人工呼吸器を取り外したが、その後3ヶ月も自発呼吸で生き続けている韓国のケース(誤報?)(AFP通信 2009年9月21日)

 韓国初の「尊厳死」を認める判決に従い6月、75歳の脳死状態の女性から生命維持装置が外されたが、約3か月が経過した21日現在も、この女性が自発呼吸で生存していることを、入院先である首都ソウル(Seoul)のセブランス病院(Severance Hospital)が明らかにした。女性の生命維持装置が外されたのは6月23日。病院側は当初、装置を外せば女性がすぐに亡くなることを予期していたといい「われわれも驚いている」と発表した。この女性は肺検査を受けている間に昏睡(こんすい)状態に陥り、2008年2月に脳死を宣告された。それから3か月後に、女性が尊厳をもって死を迎えられるよう家族が延命治療の中止を求め、裁判所に申し立てを行った。裁判所は同年12月、女性には回復の見込みがないとして家族側の申し立てを認めたものの、病院側が最高裁に控訴した。しかし、最高裁は下級審を支持し5月、病院側に延命装置を外すよう命じた。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2644553/4640045
中央日報紙は「植物状態」と報道しているので、AFPは誤報の可能性大。しかしなぜこのような誤報が起きるのか?
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=108002&servcode=400&sectcode=400


改正案の現状

2009年7月13日参議院にてA案が可決されました。以下はそれに至るまでの経過です。

研究者ほかによる改正案→ 町野案 てるてる案 森岡・杉本案 英訳 日本移植者協議会 2004年2月25日に自民党案が町野案の路線で決定したようです。新聞報道その他へのリンク:中日新聞  読売新聞 朝日新聞 毎日新聞 叩き台となった河野案。私が書いた河野案批判。 2005年1月5日に自民党と公明党が河野案に基づいた改正案を提出予定とのことです。てるてるさんのまとめ

2006年1月現在、河野太郎(自民)・福島豊(公明)議員案、斉藤鉄夫衆院議員(公明)案、金田誠一衆院議員(民主)、の3案が国会提出準備中。このうち河野福島案は町野案(脳死=人の死)に脳死拒否権、親族優先提供を付加したものに近い、斉藤案は森岡・杉本案B案に親族優先提供を付加したものに近い、金田案は旧違法性阻却案(脳死は人の死でない)に生体・組織移植も付加。

2006年9月現在、第164回衆議院に、中山太郎案(A案・自民)←河野案←町野案路線 と 斎藤鉄夫案(B案・公明)←小児科学会←森岡・杉本案路線 の2案が提出されています。ともに親族優先提供の条項を含んでいます(これは町野案、森岡・杉本案ともになかったもの)。

2007年12月現在、第168回衆議院に、新たに金田誠一案(C案・民主)←ぬで島案+森岡・杉本案+(旧違法性阻却案)が提出されました。これで、計3案が衆議院で審議中という事態になりました。金田案は、現行法の枠組みを維持したうえで、組織移植、生体移植を規定し、脳死判定を厳密化し、子どもからの脳死移植については専門的議論の喚起を促しています。親族優先提供はありません。

2009年5月現在、第191回衆議院に、新たに根本匠案(D案・自民・民主)が提出されました。大人に関しては現行法と同じで、15歳未満に関しては本人が拒否しておらず、虐待がなく、家族が承諾したときに脳死判定・移植が可能とする案。親族優先提供はありません。15歳未満でも拒否の意思表示が法的に可能としている。

2009年5月、生命倫理関係研究者による生命倫理会議が発足。脳死移植に慎重な議論・審議を求める。学界の重鎮が多数参加。

2009年6月18日、衆議院本会議で上記4案の審議がなされ、最初に投票のあった中山太郎案(A案)が可決された。残り3案は審議なし。中山案は参議院に送られる。

2009年6月26日、参議院に千葉景子案(E案・民主・社民・共産)が提出されました。法律の骨格は現行法+臨時子ども脳死臓器移植調査会の設置。A案とE案で議論開始。

2009年7月7日、参議院にA’案が提出されました。臓器移植のときにかぎって脳死判定を行なう。

2009年7月13日、参議院にて中山太郎案(A案)可決成立。本サイト等で指摘された諸問題は解決されないままに改正された。


*以下は2009年7月の改正成立以前のデータです。

 1 趣旨

2000年10月から現行の臓器移植法の見直しの時期にはいりました。厚生省の厚生科学研究費研究班のメンバーである町野朔氏は、2000年2月18日に改正案中間報告を発表し、8月22日に最終案を厚生省に提出しました(2節に全文公開)。それは、

(1)法律によって、脳死を一律に人の死とする。脳死の拒否権は認めない。

(2)脳死になった本人がドナーカードをもっていない場合、「臓器移植に自己決定して死んだ」ものとみなし、家族の承諾があれば移植できるようにする。

(3)親権者の承諾があれば、意思表示のない十五歳未満の脳死の子どもからも移植ができるようにする。

という結果を導く内容のものです。いずれ厚生省の見解に反映されるか、議員立法の形で国会に立案されると予想されます。その全文は、2節にリンクしてあります。移植推進団体からも、同様の要望書が提出されています。 私はこのような改正案に反対します。その理由は、

(1)脳死を人の死とするのか、しないのかは、それぞれの人間の死生観にゆだねるべきである。 (2)脳死の人からの臓器移植は、本人の尊い提供の意思を活かすために許可されたはずである。臓器不足だから、本人の意思が不明の場合でも摘出して使ってしまえ、という方向への改正は、臓器移植の精神に反する。

(3)十五歳未満であっても、自分の臓器提供についての意思表示は可能である。子ども本人に同意・拒否の意見表明の機会を与えないのは、日本が批准している「児童の権利条約」違反であると考えられる。

そこで、厚生省の研究班の町野朔氏が提出した改正案に反対し、それがそのままの形で国会で採決されるのを阻止し、それにかわる対案を提案する運動を、行ないたいと思います。 とはいえ、この問題に関しては、多種多様な立場や考え方があると思われます。ですので、

(1)脳死を一律に死とするのはおかしい。

(2)十五歳以上の移植の場合は「本人の意思」確認を前提条件とするとするべきである。

(3)十五歳未満の移植の場合は、なんらかの形の「本人の意思」の表明が存在することを前提条件とするべきである。

という理由でもって、改正案に反対する。

という点に絞って、反対運動を行ないたいと思います。この点さえ一致していれば、まずは手を組もうじゃないかということです。

そのうえで、対案を考えるときに、それぞれの立場から具体案を出して、議論していけばいいと思います。


 

2 町野改正案全文と、すでに出されている対案

現行臓器移植法全文 まずはこれが基本テキストです(1997年)。 町野朔による改正案

(1)「改正案」中間報告全文2000年2月18日にシンポジウムで発表された、町野朔上智大教授による改正案です。意思表示なく脳死になった人間は臓器提供に自己決定して死んだものとみなす、という立場です。
(2)「改正案」最終報告書全文(2000年8月22日です。「我々は、死後の臓器提供へと自己決定している存在なのである」とのことです。

自民党河野案

河野太郎による改正案 (2004年2月25日)対照表  町野案を基盤とした改正案。実際に国会に提出される直前まで行った。脳死=死としたうえで、家族の同意で移植を可能にする。注目すべきは、「親族への優先提供」を表明できるとしている点。これは論議を呼ぶでしょう。ちなみに町野氏は親族優先提供に関しては否定的。

森岡・杉本案

(1)子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言」(全文)2001年2月14日発表の森岡正博・杉本健郎による改正原案です。これをもとにして、具体的な改正案を作成する必要があります。新聞報道はこちら英訳はこちら旧バージョンの素案はこちら
(2)大切な<本人の意思>原則」まずは、「毎日新聞」に書いた、町野改正案批判をお読みください! 簡潔に問題点が分かります。2000年9月4日。
(3)子どもにもドナーカードによるイエス、ノーの意思表示の道を」子どもにもドナーカードによる意見表明の機会を与える。(『論座』2000年3・4月合併号)。これが議論の発端でした。私自身の考えはここに書いてありますのでお読みください。 (カエルさんによるレポート。)
(4)「臓器移植法・「本人の意思表示」原則は堅持せよ」雑誌「世界」(2000年10月号)に発表した。具体的な提言にまで踏み込んだ。
(5)日本の「脳死」法は世界の最先端」雑誌「中央公論」(2001年2月号)。 脳死の人が自発的に祈るように手を動かす「ラザロ徴候」の真実や、海外の反脳死論の動きなどを克明に報告。これを読まずして、脳死論議はできなくなりました。末尾に重要訂正あり(いやー、医学文献を読みこなすのは難しい(T_T))。→拙著『生命学に何ができるか』に増補して採録。書店でご覧ください。
(6)Reconsidering Brain Death: A Lesson from Japan's Fifteen Years of Experience 生命倫理専門誌Hastings Center Report 2001年7・8月号掲載。移植法改正と日本の脳死論議について同誌に発表された、はじめての英語論文ではないかと思われます。世界への情報発信についに成功。
(7)
臓器移植法改正案:ドナーカード普及が先だ」『読売新聞』(2004年3月24日)。自民党改正案(河野案)への批判を書きました。NEW!

てるてる案

(1)脳死否定論に基づく臓器移植法改正案について」→てるてる案の最終版です。『現代文明学研究』第3号(2000年10月19日)に論文として発表されました。脳死を人の死とせず、本人の意思を最大限に尊重して移植を可能にする対案。全体を末期医療の一部として位置付けた。大力作です。論議に一石を投じます。(旧てるてる案はこちら「臓器移植法の改正私案」)
(2)てるてる案Q&A」これは分かりやすいてるてる案(↑)の解説です。
(3)町野案(上記)への疑問」森岡HPでの激論の中から「てるてるさん(HN)」が作成した(2000年4月24日)。
(4)臓器移植法の見直しをめぐる論点」改正案を比較検討した論文。図表が分かりやすい。『月刊福祉』2001年10月号。
(5)心停止後移植も意思表示を」神戸新聞「発言」欄(2001年10月22日付)投稿記事。
(6)
臓器移植法改正案についての意見交換ページ」改正案にかんする豊富な資料があります。

日本移植者協議会案

臓器の移植に関する法律」の改正にむけて」大人も子どもも脳死は例外なく一律に人の死とする。大人の場合は本人の意思があったときにのみ臓器移植ができ、15歳未満の子どもの場合は親権者が承諾した場合に臓器移植ができるとする案。(2000年12月20日ころ作成・発表、2001年3月10日HPにて公表とのことです)。

倉持武案

脳死臓器・組織移植に関する倉持私案」1997年に発表されていた、注目すべき案です。倉持さんによるチェックカード案。倉持さんの2000年の学会発表。てるてるさんのコメント

町野vs森岡対談 『論座』2000年8月号に掲載されました。必読!ぬで島次郎による移植法批判論文「脳死と移植をめぐる政策問題」が『臨床死生学』(2000)vol.5,No.1:p.54-60に掲載されています。内容は「現行移植法の根本的欠陥」として、(1)生きている提供者の保護規定がない、(2)主要臓器以外の人体組織の利用に対する規定がない、(3)研究目的での人体利用に対する規定がない、(4)治療中止の是非論議の欠如、さらに「医療保険政策上の問題」「異常死の扱い」に触れています。どれも納得できる論点。ぜひ図書館等でお読みください。『世界』(2000年11月号130-139)に、さらに展開した論文「臓器移植法見直し真の論点」が掲載されました。 ぬで島次郎による「臓器提供先に係る生前意思の取扱いに関する意見」(2002年3月)。2001年に起きた、臓器提供先を親族に指定する事件で、厚生労働省はそれを追認する案を出しているが、それへの反論(意見公募に対して提出したもの)。移植の公平性・公開性をくずしてはなりません。ぬで島次郎による「政策提言シリーズ」No.1 『生きている提供者の保護のための臓器移植法改正・試案』 が科学技術文明研究所から刊行されました。移植法改正では脳死の子どもからの臓器摘出ばかりが議論になっていますが、実はそれよりももっと緊急に必要なのは、生体移植などの生きている人からの臓器摘出にかんする法整備です。その視点から、包括的な改正案を提言しています。各国比較などの資料も必読です。千円で販売しているようです。重要な文献です。ぜひ一読をおすすめします。 提言部分は、科学技術文明研究所HPにて公開されていますのでご覧ください。連絡先:科学技術文明研究所 Tel:044-969-3031 Fax:044-969-3039 この関連について、てるてるさんが総まとめページを作ってくれました。「生きている提供者の保護のための法改正試案 および研究対象者保護法試案」(2003年10月) 必見です中山研一による「アメリカおよびドイツの脳死否定論」(『法律時報』72巻9号p.54-59,2000年)が出ました! 超重要論文です。海外で90年代半ばより出てきた脳死論への疑問について検討しています。目から鱗が落ちるかも。日本のいままでの海外情報がいかに偏っていたかを知ることができます。 宮崎真由による「「死者の人格権」の可能性」 町野案を批判しつつ、死体には人格権が残存するという法理論の可能性を探っている。興味深い提案もあり(2001年4月)。 萩原優騎による「自己決定権論争の脱構築−脳死・臓器移植問題を中心として−」臓器移植法の解体をめざして、小松、立岩、森岡などの論を批判(2001年7月)。以前の論文に、萩原優騎「自己決定権と画一的医療:臓器移植法改正問題をめぐって」 萩原優騎 「脳死・臓器移植の論理と倫理−現代医療と自己決定権の裂け目を読む」 がある。 岡田篤志による「浮遊する自己決定―臓器移植法改正によせて―」(2001年)自己決定と、善意としての移植の怪しい関係にメスを入れた。臓器移植法改正に関する緻密な議論です。
おなじく岡田篤志による「臓器提供とドナー家族の悲嘆心理」(2003年)臓器移植とドナー家族の悲嘆と死の受容についての、よく調べられた論文です。必読でしょう。おなじく「小児臓器提供―「沈黙」の手前で―北原裕全による「脳死臓器移植の現在と現代教学への課題」(2001年10月)仏教教学から見た脳死移植問題と提言。 前田泰徳による「脳死・臓器移植に関する仏教的思考の考察」(2002年)同上。 トリオ・ジャパンによる要望書 2000年3月1日に厚生大臣宛に提出された要望書。二つの死が存在しない法律への改正と、本人の反対意思がない場合は家族の承諾のみで移植できるように改正することを要望している。町野案と軌を一にしている。 旧厚生省の臓器移植専門委員会議事録 および脳死検証会議議事録。政府の側の出方がうかがえます。こんなところに情報公開の威力が。厚生労働省審議会では、どこに引き継がれるのだろう?? 厚生科学研究費による「小児における脳死判定基準に関する研究班報告書」(竹内一夫 1999)の要旨 厚生省との交渉記録ドナーカードがあれば臨床的脳死診断は不要か?」 薬害・医療被害をなくすための厚生省交渉団。貴重な記録です(2001年10月)。 船橋市立医療センターの脳外科医・唐澤秀治さんによる「脳死判定・最新の研究から」です。シューモンの研究、ラザロ徴候、脳死判定における薬剤の影響、無呼吸テストなど、専門家による超重要最新情報です。まさに必見資料でしょう(2001年3月)。その唐澤さんが、画期的な新著『脳死判定ハンドブック』(羊土社)を刊行されました。シューモンの研究、ラザロ徴候などを、いかに家族に伝えるかを正面から書いています。関係者、とくに移植コーディネイターは全員必読です。 竹内一夫(竹内基準の人・脳外科)が、脳死の人による代理出産は検討課題と発言!マジ?ネットに現われた町野案批判です。九州、熊本のあたりの人みたいです。辛辣。
鶴田博之による町野案批判+森岡案批判(T_T) うーむ、せめて町野案に対してだけは一緒に戦いません?(2000年5月24日)
khによる町野案批判「結局何が問題なのか」オフィシャルページ管理者のkhさんによる鋭い批判。

生体肝移植ドナー体験者の会有志による生体肝移植ドナー調査に関する要望書 厚生労働省に対する要望書(2003年2月)「生体肝移植ドナー体験者の会」から自民党への要望書(2004年2月) NEW!


 3 臓器移植法改正関連サイト・掲示板・資料集

厚生省の研究班および移植患者家族団体の方々は、国会への提出を目指して着々と準備をしておられる様子です。われわれとしては、まずはネット上で、この問題の重要性を各方面にアピールしていくところからはじめなければなりません。いまのところ、「移植は人助けだし、子どものいのちも助かるのだし、どこが悪いの?」という段階の意識が、ほとんどだと思われます。

この運動に賛同されるみなさん、ぜひ、ネット上でアピールをしていきましょう。私の論文はどんどんリンクしてください。ネット上での議論が、現実世界にほんとうにフィードバックされていくものなのか、という実験に参加してください。議論を通じて、お互いに、生と死について深く学んでいけると思うし、それがこの運動のひとつの目標でもあります。上の立場に賛同される方は、ぜひ、無料サイトを立ち上げて、アピールに加わってみませんか? そしてどんどん相互リンクしてネットワークを作っていきましょう。掲示板に書き込んでいくというのも、いいと思います。ただ、掲示板に書き込むときには、礼節をわきまえて、単なる宣伝みたいな書き込みは自粛してください。あと、こういうテーマはフレーム(けんか)になりがちなので、それも注意しましょう。

その他、どういうことができるのか私にもわかりません。知恵を出し合うしかないですね。それと、ネット上での運動をサポートしてくださるサポーターを募集しています。ネット中毒の方(笑)、学生で時間が余っている方(^^;)、リアルタイムで生命倫理の研究をしたい方、ご連絡を!


意見交換のための掲示板

生命学HPの「脳死臓器移植」専用掲示板 「てるてる案」もここから生まれました。そのてるてるさんが、過去ログを作成してくれていますm(_ _)m。過去ログハウスです。
臓器移植法改正案を問う・掲示板 管理人khさん
臓器移植法改正案・意見交換掲示板 本人同意と死の選択は厳守した上で移植推進に立つ方々の掲示板です。管理人:てるてるさん。
杉本健郎HPの掲示板 「着たかもしれない制服」の著者による脳死移植掲示板
子どものいのちについて考える掲示板 子どもの脳死・臓器移植について意見交換しています
黒猫の砂場 ここでも活発な議論が・・・ 管理人:黒猫さん
カエルさんのページ 濃密掲示板コーナー 初心者の質問などが気軽にできる
さいろ社の掲示板 脳死反対+移植反対の立場です。
生き方を考えるWeb Board 仏教系の掲示板での脳死議論
臓器移植コミュニティの掲示板 なぜか学生さんが多い

運動団体など

臓器移植法改正案を問う この問題についてのオフィシャルサイトです。管理人khさん。メーリングリストはこちら。
「脳死」・臓器移植に反対する関西市民の会 阿部知子議員の秘書をつとめることになった岡本勇吉さんが代表。
医療を考える会 脳死反対+移植反対の過激サイト 資料も過激
大本教による反対ページ
衆議院委員・阿部知子さんによる反対ページ 
「脳死」・臓器移植を考える委員会 海外の資料を中心に情報を集積するサイトです 大きな力になりそう
『「脳死を人の死」としない立場から脳死・臓器移植を考える議員の会』 とりあえずこのURLみたいです
・国会議員の一覧表および事務所住所はこちらにあります。
脳死臓器移植と日本文化:仏教から答える脳死臓器移植医療
日本ドナー家族クラブ 脳死移植のドナーとなった人の家族の団体
日本臓器移植ネットワーク 移植コーディネーターの唯一の団体 
トリオ・ジャパン 移植推進の世界患者団体の日本支部
日本移植者協議会 患者団体
日本移植支援協会 患者・家族団体
わかば 渡米脳死肝移植を受けた若林正さんの日記。移植患者から見た問題提起が貴重です

資料など

金沢大学青野透さんの改正案反対・特設ページ 関連資料超充実。ご自身の論考も注目角膜移植と臓器移植法の基本理念
てるてるさんによる脳死臓器移植資料集 書籍からの抜粋など充実。必見。
「脳死」・臓器移植に反対する関西市民の会 の資料ページ。
移植情報室 移植に関する書籍リストがあります。
Transplant Communicationによる資料集 
バチスタ手術体験記 移植ではなく手術を選んだ方の体験記。リンク充実。
浄土真宗本願寺派僧侶への脳死臓器移植アンケート結果 石田 智秀さんによるものです。
天台宗の主張 
カエルさんの脳死臓器移植ケロケロページ 関連サイトの一覧があります。
循環器病センターの脳死移植関連書類内容一覧 脳死判定承諾書などの現物
天台宗の考え方
ドナーカードを使った子どもへの道徳授業 何年生なのか不明ですが、興味津々
小学校6年生への道徳授業 一面的な情報提供で子どもたちを混乱させている例
脳死臓器移植についての学会レポート りんごさんによるレポートがたくさんありますNew!

エッセイ・主張など

カルチャーレビュー特集:脳死臓器移植 てるてるさん、ひるますさんなどの寄稿です。必読。
大野綾子さん「脳死移植について」 母の脳死体験を通して考えたことです  
脳死・臓器移植問題を考える 拓殖大学亀田泰子(1998)さんの論文。よく調べている。アンケート分析は役に立つ。
ひるますさんのページ バナーを作ってくれました
若狭高校のディベートのページ 臓器移植についてのディベートを行なうようです。リンクも充実。
団藤保晴さんの時評「脳死臓器移植に見えた底の浅さ」  99年5月に書かれたものだが、問題の本質をするどくえぐっている。
ぴちかーとさんの「臓器移植における年齢制限の疑問」 大学のレポート。町野案反対。
糸山敏和さんの「庄さん、じゃあ、また」 脳死になった親しい人との別れの記録
脳死の受容をめぐって(2ch) 脳死家族の書き込みから始まった議論の顛末(てるてるさん作)
NHK脳死報道に関する疑問 第1例目のNHKの報道によって臓器提供者が特定されたことに対する意見書
コマツバラオリカさんの「夜が明ければ朝は来るのか」 脳死臓器移植をテーマにした戯曲の完成版です。

関連サイトがありましたら、ぜひご連絡ください。

特に、「児童の権利条約」サイト、法律系のサイト、看護学系のサイト(小児看護、母性看護)などを運営されている方々、これはあなた方の領域に大きな意味を持つ問題です。ぜひ議論に加わってください。これらのサイトへの情報提供、書き込みを、みなさんも試みてください。・・・でも、児童の権利条約系の方面からの関心が、こんなに薄いのはなぜ?? だって、子どもの意見をどう尊重するかという「児童の権利条約」の根幹に関わる問題ではないのでしょうか? 「子どもの意見表明権」の確立に向かって行きませんか?


 4 集会・シンポジウム開催案内

2000年4月18日 臓器移植法制定のときに「忖度論」批判の運動で活躍されたジャーナリストの向井承子さんたちが、とうとう「町野案」反対に立ち上がりました。衆参両院の国会議員と一緒に国会でシンポジウムを開きました。アピールとシンポジウム案内をぜひご覧ください。その会合の様子のレポートがカエルさんによって発表されました。 2000年7月2日(日)上智大学にて、森岡と町野朔氏とマシア氏が講演するシンポジウムがありました。発言の全内容がアップされました。 2000年7月11日(火)TBSラジオ「アクセス」にて宮崎哲弥さんと移植法改正について対談、視聴者と会話する。そのときのサブ掲示板のリアルタイム書き込みがちゅう湖さんのページにあります。 2000年10月17日(火)に、大本教+脳死反対国会議員による勉強会がありました。衆議院議員第1議員会館(永田町) 第1会議室にて 国会議員勉強会「脳死・臓器移植勉強会=臓器移植法の見直しについて=」出席者:衆参両院議員、脳死・臓器移植反対派諸団体 人類愛善会代表および会員有志、阿部知子、小松美彦。カエルさんによるレポートです。 2001年2月10日(土)に、「脳死」・臓器移植に反対する関西市民の会が主催する、「頭部外傷や病気による後遺症を持つ若者と家族の会」会員、お嬢さんを脳低体温療法で助かった経験をもつ母親のご意見などをお聞きする会が開かれました。 2001年5月5日(休日)に、日本小児科学会主催「小児の脳死臓器移植はいかにあるべきか」 が東京で開かれました。柳田邦男、杉本健郎、森岡正博、町野朔、仁志田博司、田辺功ら出演。正念場だと思われます。カエルさんによるレポート2001年11月11日(日)に、東京品川で、「「脳死」・臓器移植を考える集会: 検証! 臓器移植ネットワーク不正問題」が開かれました。濱邉祐一、阿部知子らが発表。

*情報求む*


 5 ヒト組織・クローン規制法・ES細胞

ぬで島次郎「ヒト組織の移植等への利用のあり方について(案)」に対する意見」さらに「骨」「心臓弁」などの人の「組織」についても、家族の承諾だけで脳死の人から摘出できるような指針が厚生省から出されようとしています。これは、臓器移植法改正のための外堀を埋める試みだとも解釈できます。三菱化学生命科学研究所のぬで島次郎さんから緊急のアピールが届きました。ぜひ目を通してみてください。(2000年3月23日掲載) pudding厚生科学審議会先端医療技術評議部会の報告」上のヒト組織に関する厚生省の審議会のpuddingさんによる傍聴レポートです。移植法改正と連動する動きもレポートされていて、必見。(2000年5月8日掲載) 結局、移植法改正論議と合体させて議論するということになったようです。 ぬで島次郎緊急アピール・政府提案「ヒトクローン禁止法案」への根本的疑問」(2000年11月9日)国会で議論されたクローン規制法への疑問提示です。民主党が政府案を修正して賛成にまわりましたが、それについて、ぬで島さんが「「クローン規制法」国会審議への意見」(2000年11月20日)および参議院にて参考人として意見を述べられたときのレジュメ「「クローン法案」の問題点と望ましい代案」(2000年11月24日)を書かれています。議論のたたき台として必読です。しかし努力空しく修正政府案が参議院で可決されました(泣)。しっかりと、今後の経過を見守りましょう。さらに、先日発表された「生殖補助医療のあり方についての報告書」にも疑問が・・・。「生殖補助医療のあり方の報告書への疑問」(2000年12月19日)をお読みください。さらに「法制審議会・生殖補助医療関連親子法制部会・要綱中間試案」への意見(2003年8月)です。人の胚を独自の存在と認めないというのはおかしいのではないか? 厚生労働省(旧厚生省)の作成した精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療 のあり方についての報告書(2000年12月)。これに基づいて「代理母禁止」などの法律が作られるのか、それとも、飯塚理八らの推進派が巻き返すのか。 文部科学省が「クローン人間の産生禁止について」を発表しました。でも、日本人が海外でクローン産生に関わることは適当でないなんて、どういう根拠で言えるのか疑問。もしそれが言えるんなら、日本人がアメリカで商業代理母にかかわることも適当ではないと言わないといけないはず。もちろん、海外での子どもからの臓器移植もね。 文部科学省生命倫理・安全部会に様々な資料があります。審議会はこちら。その中から、クローン規制法の本文、特定胚の取扱いに関する指針(案)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針。要注目。クローン技術規制法成立前後の国会議事録総合科学技術会議で出された「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方(案)」2003年12月12日、など。しかし、省庁の関係はどうなっているの?わかりにくいなあ。 NEW! 総理府の「クローンに関する有識者アンケート調査」(1998年8〜9月)。 アメリカのブッシュ大統領ES細胞資金援助の演説の翻訳(中山元)。「既存の細胞束の研究のための資金提供は維持する。胎児の新たな破壊を承認したり、奨励する研究への資金は停止する」ってのは、なんかご都合主義。 シンガポールで採取されたES細胞が、オーストラリアの会社から、米国のNIHに提供される。この構造は?Jeremy Rifkinの"Fusion Biopolitics" 米国議会のクローン法案の水面下の状況をレポートしています。 イタリアでのクローン人間作成計画についてのCNNの報道その2。(2001年3月)ここからたどっていけます。 クローン赤ちゃん妊娠についてのBBCのサイト(2002年4月)。サンデータイムズによるウィルムット博士の発表「クローン動物は遺伝異常頻発」。2002年4月28日治療用クローンとES細胞の推進を訴える当事者団体としては、日本せきずい基金など。再生医療学会の動向(読売)*クローン人間については、いずれ独立ページを作る予定です。 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針が2001年3月29日に厚生労働省より発表されました。今回、きれいなHPになってます。玉井真理子出生前診断・着床前診断のこといろいろ」必見のサイトです。このテーマ関連の世界の最新情報が満載!! NEW! 柘植あづみES細胞研究推進の論理への疑問」この問題も、関連しますね。 萩原優騎なぜヒト・クローンを造ってはならないのか代理母、中国では禁止されたみたい。米国での双生児代理母訴訟韓国では実施。法規制なし。

組織培養と芸術プロジェクトについて。豚の細胞でできた羽根など。


 6 関連資料および海外の現状

各国の法律 オランダ スウェーデン ドイツ 韓国 日本の臓器移植法の英訳

総理府による臓器移植に関する世論調査(2000年5月調査)必見!!「脳死移植には本人+家族の承諾が必要 69.9%」など

内閣府による臓器移植に関する世論調査 (2002年7月調査)必見!!15歳未満からの摘出、本人の意思確認、親族指定の臓器提供などについての意見。どれも意見が割れていて、まだまだコンセンサスはないものと考えられます。
内閣府による臓器移植に関する世論調査 (2004年8月調査)必見!!依然として国民の意見は割れています。
内閣府による臓器移植に関する世論調査 (2008年9月調査)必見!!A案の支持者は10数%ということがわかります。
大阪読売新聞による、各宗教団体の脳死移植についてのアンケート調査の結果一覧表。必見!!
大本教による5000人を対象としたアンケート調査によると、ドナーカードを所持している人の60%が脳死と植物状態の違いが分からないと回答しています。衝撃的です。(2000年)

アメリカ合衆国の「脳死反対」論 End of Life Care Understanding Brain Death の2本。通説に反して、アメリカにも強力な脳死反対論を取る団体があります。キリスト教系のAALです。そこにある論文をぜひ読んでみましょう。医学的にするどく迫っています。 アメリカのドナーファミリーとレシピエントの交流サイトTransplantbuddies。多数の掲示板へとリンクしています。

アメリカのサイトに載った、日本の臓器移植法についての記事。翻訳が完成しました。テオさんありがとう! 海外でも注目されてるようです。2000年10月28日付け。

ドイツの脳死臓器移植事情(1999年のもの)現地におられる美濃口坦さんのエッセイ2本です。

海外サイト:脳死を考えるネットワーク International Network For the Definition of Death 海外でも脳死を再考する動きがあるのです。こういう情報がなんで日本に紹介されないの?

とうとう、海外でも動きが・・・。120名の医師・哲学者等の署名による「脳死反対宣言」が公表されました。言い出しっぺは、安楽死反対、キリスト教原理主義の人々か。翻訳はここに。日本人賛同者も募集中。

スペインの移植コーディネーターについての文献の翻訳です(てるてるさん)。スペインでは、なんと、コーディネーターが臓器を獲得するごとにボーナスが出るようです。これでいいのだろうか・・・・(増補改訂版)。

デンマーク倫理委員会の「推定同意」に関するレポート「臓器提供─生前同意か推定同意か?」(てるてるさん翻訳)。結果的に、デンマークは推定同意を勧めない。

J・マシア「移植医療への疑問」カトリックの最近の考え方は移植全面肯定ではなくなったとの指摘。

在日の方の脳死世論調査の結果

韓国では、脳死判定の手続きを緩和して、臓器移植をやりやすくしようという動きがあるようです。 問題提起資料「中央公論」の拙論を補足する資料です。古いのも混ざっている。脳死の人への麻酔とラザロ徴候[00/5/22]

Check! Neurology OTA 

2000年8月にイギリスで脳死の人への麻酔が記事になって大論争になったが、その張本人のDr.Keepは、「麻酔をかけてくれるのなら私はドナーになっていい」と述べている(翻訳はここ)。超大問題がここに口を開いている。麻酔したらOKの思想。 ドナー家族とレシピエントの交流について、 てるてるさんの論考「"transplant community" の二つの意味」 レシピエントを中心としたコミュニティと脳死の人を中心としたコミュニティの架け橋とは(2001年4月23日)。アメリカのドナー家族とレシピエントの交流のためのガイドラインNational Communication Guidelines を、てるてるさんが翻訳(5月1日)。ドナー家族中心なので、脳死の人中心とは少し違います。さらに、Pamela Albertによるこのテーマの論文2篇(1998、1999)を、てるてるさんが抄訳・解説されてます。 日本臓器移植ネットワークのあっせん業取り消しの申し入れ全文。2001年7月の親族への指名移植に関する不正の告発です。 臓器提供を事前に意思表示している場合にのみ脳死判定を行なうという、日本と同じ枠組みの法律をもっているのが、オーストラリアのウエスタンオーストラリア州です。ということは、「死の選択」が認められているのは、日本、米国ニュージャージー州、オーストラリアウエスタンオーストラリア州の、3地域ということになるようです。 エジプトの場合、アズハル大学のタンタウィ総長は「提供者が脳死状態の場合、家族、もしくは、当人が意識のある間に同意していることが前提で、かつ心臓の停止後に限り提供を許す」という見解を出したらしい。イスラムの事情については、Ebrahim MoosaThe Body in Muslim Ethics: The Dissonance of the Gaze(s) (2000)が有益。イスラムでは1986年に、「脳死は人の死」として差し支えないとの指針が出たようだ。"the Academy adopted brain death as an acceptable definition of death in terms of Islamic criteria. " その位置づけが具体的にどうなのかはわからないが、重要情報。臓器移植に関しては、エジプトは寛容寄りであるが、パキスタンは否定的だとのこと。 ユダヤ法における脳死論議 "The Brain Death Controversy in Jewish Law" Rabbi Yitzchok A. Breitowitz というのがあります。

Eelco F.M. Wijdicks,"Brain death worldwide"(Neurology,2002)によれば、調査した80カ国中69%の国で移植法が存在し、88%の国で大人の脳死判定基準が存在。大人の脳死判定基準がない国が10カ国もあるんだね。


 あとがき

ということで、「個人」の立場で、クールな活動をやっていきませんか? 全体を統率する者は誰もいず、各自が、自分自身の判断によって動いていくというのが、ネット時代にはいちばんふさわしいのではないでしょうか。私はそう思っています。
  ←この二つのバナーは、われわれ自身が改正案(対案)を発表しちゃったから、もう使わない方がいいのかもね。   ←この二つは、十分使えます。

これらのバナーをHP等にご自由に転載ください。リンクバナーとしてもお使いください。
上左端はカエルさん、それ以降はひるますさん作です。


1) 報告によると、02〜05年度に、旅行や仕事で米国、カナダに滞在中の旅行保険契約者9人が脳血管障害で入院。主治医は家族や損保の現地スタッフに「脳死」と説明した。うち3人の家族は「治療中止は納得できない」などと訴え、チャーター機で帰国。日本で治療を受け、意識が回復した。搬送費用の約2000万円は保険で支払われた。残り6人は、チャーター機手配に必要な額の保険に加入していなかったことなどから帰国を断念。現地で死亡したという。

 意識が戻った60代男性の場合、カナダで脳梗塞(こうそく)となり、入院した。人工呼吸器をつけなくても呼吸できる自発呼吸はあったが、医師は家族に「脳死」と説明したという。しかし、男性は帰国後1カ月で意識が戻り、記憶も回復した。

 日本、米国、カナダとも自発呼吸があれば脳死とは判定されない。回復した3例は病院の診断書に「脳死」との記述はなかった。病院側は損保に「保険会社で死の解釈が違う。治療費を保険で確実に出してもらうため、(病院としては)脳死かどうかは書かない」などと返答したという。

 日本医科大の横田裕行助教授(救命救急医学)は「海外の基準でも脳死なら意識は回復しない。米やカナダなどの一般医療現場では、回復は難しいなどの意味で脳死を使うことがある」と言う。【大場あい】

 ◆脳死判定 日本では、臓器移植法に基づき、臓器提供の場合に限って、脳死が法律上の死とみなされる。脳死と判定するためには、(1)深いこん睡(2)瞳孔の散大と固定(3)脳幹反射の消失(4)平たん脳波(5)自発呼吸の消失−−のすべてを満たし、6時間たっても状態が変わらないことを確認する必要がある。米国では、州法などで「脳死」を「脳幹を含む全脳の不可逆的停止」などと定義している。どちらの国でも、自発呼吸があれば、脳死とは判定されない。

 ◇病院間で脳死判定基準に相違…米国

 米国は脳死者からの臓器移植先進国で、年間6000例前後が実施される。脳死は人の死という考え方が広く受け入れられているためだ。松本歯科大の倉持武教授(哲学)は「日本よりも臓器移植を強く推進するというムードが強く、医療現場に影響しているのかもしれない」と指摘する。

 実際、米麻酔学会誌(1999年7月号)によると、頭部外傷で脳死と判定された男性が、臓器摘出直前に自発呼吸をしていることが分かったが、そのまま摘出された例などが紹介されている。

 日本とは医療制度、保険制度が異なり、医療も「営利産業」とされる。患者死亡の場合、保険会社が死亡直前の治療を「無駄」と判断するケースもある。病院側は保険会社からの支払いを受けるため、早めに治療を打ち切る傾向もあるようだ。

 日本では臓器移植法が施行された97年以降、脳死移植は47例。杏林大学病院の島崎修次救命救急センター長は「米国、カナダの脳死判定では脳波は取らず、日本ほど厳格ではない。カナダでは病院ごとに判定基準を定めている」と説明する。【大場あい、山田大輔】

2)[オクラホマシティ 24日 AP] 脳死を宣告されてから4カ月、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、ザック・ダンラップさんは意識を取り戻した。

三輪バギーで交通事故に遭ったダンラップさんは、11月19日、テキサス州ウィチタフォールズのユナイテッド・リージョナル・ヘルスケア・システムで脳死を宣告された。彼の家族は彼の臓器を提供することに同意した。

親族が最後の別れを告げにきたとき、彼は足と手を動かした。彼はポケットナイフによる足や爪への刺激に反応を見せ、48日後、家へ帰ることができた。現在も自宅で回復中だ。

24日、彼と家族はニューヨークでNBCの番組『トゥデイ』に出演した。
「気分はたいへん良いです。ただ、たいへんです……忍耐力がないので」と、彼はNBCに述べた。

21歳のダンラップさんは、事故の記憶は何もないと発言している。
「事故が起こる1時間のことは少しだけ覚えています。6時間前のことは、ちゃんと覚えています」と、彼は言った。

ダンラップさんは、自分が死んでいると医師が宣告したのを聞いたのを覚えているという。
「そのとき起き上がってしたかったことをできなくて良かったです」と、彼は言う。
起き上がって生きていると知らせたかったのかと聞かれ、彼は「窓を突き破ってしまったでしょうね」と答えた。

CTスキャンの結果を見た父親のダグさんは、「活動が全くありませんでした。血流も」と証言している。

ザックの母親パムさんは、彼がまだ生きていると発見したときは、「人生で最も奇跡的な感じがしました」と語っている。
「私たちは親として感じるどん底の気持ちに落ちてから、また頂上にのぼったのです」と、彼女は言う。

パムさんは息子が「驚くほどよい調子」だというが、まだ脳外傷の回復に伴う記憶傷害が残っているという。
「彼が完全に回復するには1年以上かかるかもしれません。でも、それは構いません。 どれだけ長くかかろうと、私たちは彼がここにいることを感謝しています」と彼女は語った。

ダンラップさんは、最初に反応をみせるきっかけとなったポケットナイフを持っている。
「感謝の気持ちでいっぱいになります、彼らがあきらめなかったことに対して。早死にするのは善人ばかりだから、僕は死ななかった」と、彼は語った。

原文>>http://www.cnn.com/2008/US/03/24/NotDead.ap/index.html